ノアイアを装着したゴルフカート

 トーヨータイヤがエアレスタイヤの実用化に乗り出した。空気の充てんが不要なエアレスタイヤ「noair(ノアイア)」の社会実装を見据えた取り組みを加速する。ターゲットとするのはゴルフカートや軽自動車クラスの小型電気自動車(EV)だ。既存の空気入りタイヤとは異なる領域で市場を開拓し、次世代モビリティを支える〝足〟として育てていく。国内タイヤメーカーの中で先駆けてエアレスタイヤの実装に取り組む、トーヨータイヤの技術・戦略を追った。

◆開発着手から15年、改良重ね実用化へ

 同社がエアレスタイヤ開発に着手したのは、2006年。車両の装着にまでこぎつけたのが17年で、近未来型エアレスコンセプトタイヤとしてノアイアを発表した。足かけ11年、試行錯誤して形にはしたものの、水谷保執行役員技術開発本部長は「この時点では(性能的に)タイヤとして成立するものではなかった」と振り返る。発表後は展示会での技術披露やノアイアを装着した軽自動車の試乗会などを経て技術改良を重ねてきた。

 今回、改良したノアイアは、17年時点の開発品に比べて破断強度を約1・4倍、耐久性能を約10倍にまで高めた。車両に装着し、走行できるレベルにまで進化させたことで、車両への本格導入に一気に近づいた。

◆グリーンスローモビリティでエアレスの強み生かす

 エアレスタイヤは名前の通り空気の充てんが不要となり、パンクせず空気圧管理などのメンテナンスも必要なくなるメリットがある。ただ、現在は道路運送車両法により公道では車両に空気入りタイヤを装着することが義務付けられている。そのため、エアレスタイヤは現状、私有地など管理されたエリアでしか走行はできない。

 こうした走行が限定された場所でも、トーヨータイヤは商機があると見込む。エアレスタイヤの特徴を生かすためにもゴルフ場での移動に使用するゴルフカートや、地方での移動手段に使用する小型EVなど低速かつ環境にも優しいグリーンスローモビリティでの活用を見据えて、導入に向けた取り組みを始めた。

 すでにゴルフ場などへのアプローチを開始している。ゴルフ場は芝生や登坂・降坂など「さまざまな路面があり、実証場所として適している」(技術開発本部先行技術開発部設計研究・技術企画グループの榊原一泰グループ長)ためだ。ゴルフ場での活用を想定して改良したノアイアには、オールシーズンタイヤ「セルシアス」の性能を踏襲した全天候型トレッドを採用。あらゆる気候でも走行できる性能を備えている。

◆使用段階でのコストメリットも実現

 ゴルフカートに装着されているタイヤは海外製のものが多く「コスト勝負になる」(榊原グループ長)ことが懸念される。エアレスタイヤは通常のゴルフカート用タイヤよりも高額になるものの、メンテナンスが不要であることや、リトレッドなどで、まずはタイヤの使用から付け替えまでのサイクル全体でのコスト減で差別化を図れるとする。ノアイアは、樹脂製のスポークにトレッドゴムを貼り付けているため、摩耗したトレッド部分を張り替え、リング・スポーク部分を繰り返し使用することで社会的な付加価値を提供する。

 まずは、ゴルフカートへの導入を進めていくが、小型EVでは普及が進む欧州などグローバルで装着を広げていく考え。水谷執行役員は「既存の空気入りタイヤに取って代わる領域ではなく、エアレスを用いて運転する楽しさ・豊かさと、車や乗員の安心・安全、サステナビリティーな製品として(導入を)早期に実現する」と意気込む。トーヨータイヤの新たなモビリティへの展開は始まったばかりだ。