自動車税制の抜本見直しは待ったなしだ (イメージ)
廃止された「道路特定財源制度」の名残がある自動車税制

 自動車税制に抜本見直しの機運が急浮上している。原動力はカーボンニュートラル(CN)への取り組みだ。政府は2035年までに新車(乗用車)のすべてを電動車にする目標を掲げた。この実現には政策の総動員が不可欠な一方で、財源にも目配りする必要がある。これまでの複雑な対立構造から抜け出し、官民で持続可能な自動車税制をつくり上げることができるか。

 自動車利用者が支払う主な税金は消費税を除いても8種類(燃料税含む)ある。日本自動車工業会(自工会、豊田章男会長)の試算によると、燃料税を除いた保有13年間分の負担額は英国の約2・2倍、ドイツの約4・8倍など、主要国で最も高い部類に入る。日本自動車連盟(JAF)が昨夏に実施したアンケートでも、有効回答数約17万人の9割が「非常に負担に感じる」「負担に感じる」と答えた。

 日本で自動車に関する税金が高いことには理由がある。戦後のモータリゼーション(自動車の大衆化)に合わせて道路網を急いで整備する必要があったからだ。13年前に廃止されたが、税収の大半は「道路特定財源制度」を通じて道路整備に使われた。世界でも課税例の少ない「自動車重量税」や、本来の税率よりも割高な特例税率(旧暫定税率)はその名残だ。

 税額の高さだけでなく、仕組みが複雑なことも自動車税制の特徴だ。国税や道府県税、市町村税などと細かく分かれ、それぞれに所管の中央省庁と財源を握る自治体、利害団体が結びついて見直しに抵抗する。リーマンショックの経済対策として導入され、その後に恒久化された「エコカー減税」や、2年前に実現した自動車税の恒久減税といった変化はあったが、全体の税体系としては戦後から半世紀以上も温存されているのはそのためだ。

 しかし、今後はさまざまな提案が出てきそうだ。自動車総連(髙倉明会長)は、(軽)自動車税と自動車重量税を「自動車保有税(仮称)」に、揮発油税や軽油引取税などを「燃料税(同)」に一本化し、それぞれCASE(コネクテッド、自動運転、シェアリング、電動化)とCNの推進に充てる特定財源とするよう求めている。顧問を務める古本伸一郎衆院議員は「暫定税率を下げてくれないのなら納税者に還元すべきだ」と語る。

 自工会など業界団体は9月に税制改正要望を公表する。統括団体である日本自動車会議所の内山田竹志会長は「カーボンニュートラルは(見直しの)良いきっかけになる」とした上で、「政府や議員の方々にはゼロベースで考えていただきたい」と注文をつける。

 自民党の税制調査会長も務める甘利明衆院議員は「どういう方向にするのかという議論ぐらいは来年から始めてもいい」とした上で、「内燃系エンジンによる税と全然違う新しい基準をどうつくっていくかだ。極力、(自動車利用者の)負担増にならないように、かつ理屈は通るものにしなければならない」と本紙に語った。

 電動化を加速させるとともに、電動車の普及で先細る燃料税収をどう埋め合わせるかは主要国共通の課題もである。税は個人や企業の振る舞いに多大な影響を及ぼす。制度設計しだいではCNへの道筋が遠のき、自動車産業の国際競争力が揺らぎかねない。

 これまでの「減税VS現状維持」の対立構造ではなく、政府と自治体、産業界が一丸となり、CNや税収、産業競争力や国民のモビリティ(移動性)などを両立させる新たな自動車税制像をつくり上げる必要がある。

(税制取材班)