EU欧州委員会がカーボンニュートラル社会に向けて、2035年にハイブリッド車を含めてガソリン車、ディーゼル車の新車(乗用車)販売を禁止する政策を打ち出した。30年までに温室効果ガス排出量を1990年比55%削減する目標に向けた対策案の一環で、まず2030年までに乗用車の二酸化炭素(CO2)排出量を21年比55%削減を義務付けるため、大幅な燃費改善が求められる。また、環境負荷の緩い国から域内に輸入される製品には関税を課す。電気自動車(EV)の拡充などを打ち出してきた自動車各社は電動化戦略の見直しを迫られる。

 欧州委が発表した気候変動関連の包括的政策案によると、30年のCAFE(企業別平均燃費)規制を厳格化、35年に100%削減する目標を追加した。域内で自動車以外も含めて排出される温室効果ガスは19年に1990年比で24%削減しているものの、地球環境を維持するためには削減ペースを加速する必要があるとして、排出削減のペースが鈍い運輸部門に対してより厳しい目標を定める。2035年に欧州では内燃機関を搭載した乗用車の新車は販売できなくなる。

 域内の一部の国では内燃機関の販売を禁止する方針を表明していたものの、欧州全域でEVなどのゼロエミッション車のみの販売にするには課題も多い。現時点でEV販売比率は地域差が大きく、ノルウェーやスウェーデン、オランダなどでは普及が進むものの、EV販売比率が1%未満の国も少なくない。20年時点で域内全体では5%。

 自動車メーカー各社は、50年のカーボンニュートラルを見据えて、EVシフトを本格化する計画を相次いで策定してきた。しかし、35年の内燃機関車の販売禁止が現実化すれば、戦略の見直しを余儀なくされる。

 欧州自動車工業会(ACEA)のオリバー・ツィプセ会長(=BMW社長)は「特定の技術を義務化したり、禁止したりするのではなく、イノベーションに焦点をあてるように要請する」とし、内燃機関車を排除する政策を批判するとともに、充電インフラの整備が進んでいないことが課題と指摘する。

 計画では25年までに主要高速道路に60㌔㍍ごとにEVの充電器、150㌔㍍ごとに燃料電池車のステーションの設置を義務付ける方針も示した。ツィプセ会長は欧州の全てのドライバーが利用できる充電ネットワークのあり方を模索する必要があるとしている。

 23年から暫定的に国境炭素税も導入する方針も示した。EU域外の事業者が、環境基準を満たさない製品をEUに輸出する場合、CO2排出量に応じた関税を課す。

 今回の政策は、欧州市場に進出している日系自動車メーカーの電動車戦略にも大きな影響を与える。政策の実行には加盟国などの承認が必要で、先行き不透明感はあるものの、各社とも今後の動向を注視する。