会見する平井デジタル相

 政府は26日、法人設立に関する行政手続きのほぼすべてでオンライン申請を可能にしたと発表した。2020年1月に導入した「法人設立ワンストップサービス(OSS)」の機能を拡充したもので、これまで行えなかった「定款認証」と「法人設立登記」もカバーした。定款認証や設立登記は従来、申請完了までに3日程度かかっていたが、新たな法人設立OSSの利用で24時間以内へと大幅に短縮できる。構造変革期に入った自動車産業でも今後、新会社の設立などが増えるとみられる。電子申請の強化で、申請者の負担軽減につなげて企業活動の活性化に役立てる狙い。

 追加した新たなサービスは同日からスタートした。年金や健康保険など国や自治体などに申請が必要な29の手続きを、行政のオンライン手続きサイト「マイナポータル」上で一括して行えるようになった。法人名や代表者名、本店所在地といった共通項目は1度の入力だけですべてに反映される。さらに、登記後に求めていた「定款・登記事項証明書」の提出も不要とした。20年に法人登記した申請数は全体で11万件超あったが、法人設立OSS利用は1216件にとどまっている。政府は大幅な利便性の向上により、新サービス経由の法人設立を一気に増やしたい考えだ。

 同日の閣議後会見で平井卓也デジタル改革担当相は今後、「民間事業者と連携し、法人口座の開設や保険契約などの民間サービスの契約も法人設立と合わせて行えるようにする」計画も明らかにした。一方で、「(電子化で先行する)エストニアは17分で申請が完了する」とし、「常に改善を続けていく」と引き続きサービス内容の拡充に努める方針も示した。

 また、平井デジタル相は「100年に1度の変革期に入る中で、これからベンチャー企業などが数多く世の中に出てくる」と見通している。こうした企業が行政手続きなど「本来の取り組み以外で負荷がかかるのは、競争力にも影響する」とし、さまざまな日本特有の制度について「不断の見直しを進めることが重要」との考えも述べた。