誇らしい表情の上位入賞者たち
真剣な表情で走行する子どもたち
モックカーレース会場となったバンテックトラック
モックカーレース
参加者を称える山本事務局長(左)

 NPO法人日本ソープボックスダービー協会(阿野安雄理事長)は、「2021ソープボックスダービー ナショナルチーム選考会(神奈川大会)」を、横浜市旭区のよこはま動物園ズーラシア北門駐車場特設コースで開催した。子どもたちが自身の体重と車重を動力にタイムを競うレースで、8~13歳のパイロット23人が出場。同グランプリを通じ、子どもたちにクルマや競技の魅力を伝えるとともに、青少年の健全育成に努めたいとしている。レースの結果、小学5年生の工藤夏海選手が優勝に輝いた。(木下 采)

 ソープボックスダービーの起源は20世紀初頭の欧米とされ、せっけん工場で使用した箱に車輪を付け走らせたことがはじまりという。米国では、子どもが参加できるレース競技として80年以上の歴史があり、世界最高峰の重力カーレース「オールアメリカン・ソープボックスダービー(AASBD)国際大会」を毎年開催している。自身の体重と車重で坂道を滑り降りタイムを競うシンプルな競技スタイルは、米国をはじめ世界各地の親子に受け入れられ、親しまれている。

 今大会は5日に開催。新型コロナウイルス感染拡大防止の観点から縮小開催となった。レースはAASBDの規則を適用し、公平を期するため、車両は部品まで統一、出場パイロットの最大重量に合わせ80㌔㌘に重量を調整して走行した。全長95㍍の特設コースは坂道の傾斜を利用し、高さ60㌢㍍のスタート台から走行して最速タイムを競った。

 運営には、2008年に支援を開始したウエインズグループ(宮原郁生代表、横浜市中区)の横浜トヨペット、トヨタカローラ神奈川、ネッツトヨタ神奈川の3社と、15年からサポートしているKTグループ(上野健彦代表、横浜市神奈川区)のトヨタモビリティ神奈川がパートナーとして協力。神奈川県自動車整備振興会なども後援している。

 優勝者は来年8月に米オハイオ州で開催する「第84回オールアメリカン・ソープボックスダービー国際大会」の出場権を得ることができる。優勝した工藤選手には、横浜トヨペット間島努常務取締役トヨタ事業本部長から米国行きの航空券が手渡された。

 工藤選手は、バトントワリングに打ち込む小学5年生。出場2回目で優勝を勝ち取った。アドバイザーの言葉を熱心に聞き取り、実践したことが好タイムにつながったという。優勝について尋ねられると「昨年は残念な結果だったので、今年は1位で嬉しい」と笑顔で答え、米国での国際大会について「みんなの力を背負って頑張ります」と意気込みを述べた。

◆モックカーレース初開催 優勝は浅沼選手(中1)

 会場では「モックカー」を走らせタイムを競う「蓼科山聖光寺さんカップ」も初開催した。タイムアタックレースの結果、ソープボックスダービー出場5回目の浅沼優宏選手(中学1年生)が優勝、浅沼選手ほか上位入賞者に表彰状と賞品が贈られた。

 モックカーとは、ソープボックスカーの約10分の1の大きさの木製の模型で、自ら組み立てて走らせることができる。「クルマを走らせるだけでなく、作る楽しみも感じてほしい」(創業者/山本君一副理事長)という思いから、同協会が生み出した。制作とレースに取り組む工作教室は手軽に楽しめる遊びとして受け入れられ、ソープボックスダービー普及活動の一環として、カーイベント会場など全国各地に広まりつつある。

 昨年には、交通安全祈願の蓼科山聖光寺(長野県茅野市)の協力を得て、モックカー型のおまもりを製作し、今大会でも使用した。遊んだ後は、交通安全のお守りとして飾っておくこともできる。おもちゃのモックカーをおまもりとすることで、子どもたちに楽しい遊びの記憶とともに交通安全への意識高揚を促す。

 今大会はバンテック(西澤正昭社長、横浜市西区)との提携企画として、大型トラックの荷台にコースを設置、モックカーの点検およびタイムアタックレースを行った。選手たちは、ソープボックスダービー本選に向けた練習走行の合間に集まり、普段間近に見ることのないトラックの大きさに目を輝かせ、自作のモックカーが走る様子を眺めて楽しんだ。

 閉会に際して山本教子事務局長は、「なにより子供たちには、レースを通して挑戦する心を育ててほしい」と設立当時より変わらぬ活動理念を改めて宣言し、協賛・後援に対する感謝の意を述べるとともに、出場した選手たちの健闘を称えた。

 今年はコロナ禍のイベント自粛により、ソープボックスダービー普及活動も大幅な制限を余儀なくされた。同協会では、コロナを機に足もとの資源を見直し、イベントに頼らないPR展開を強化している。ホームページを刷新しファンづくりページを設け、最新の活動情報を発信できるよう整えた。動画作成にも取り組み、ソープボックスダービーの紹介やモックカーの組み立て動画をSNS上で公開している。今後も、ウィズコロナの時代において、ソープボックスカーの魅力を人々に訴求していくため、オンラインコンテンツの充実に力を注いでいく。

 さらに、同協会でイベントを随時実施できる常設施設も整える。現在、神奈川県秦野市にある同協会事務所内「ソープボックスダービー広場」にて、モックカーの常設レースコースの建設を進める。来年の完成を目指し、さらなる支援者を募っていく。