ドライバーの操作ミスを防ぐ技術の投入が着々と進む

 自動車メーカーによる既販車向け安全装置の投入が進み始めた。ホンダは、同社初となる後付けのペダル踏み間違い時加速抑制装置を7月下旬に発売し、保有台数の多い初代「N-BOX(エヌボックス)」と2代目「フィット」に装着できるようにする。トヨタ自動車は、ペダルの踏み間違いを推定するアルゴリズム(計算手順)を開発し、後付け装置にも展開し始めた。各社は新車の安全装備を拡充する一方で、政府の要請に応えて既販車にも安全対策を施し、高齢ドライバーの操作ミスに起因する事故を減らしたい考えだ。

 ホンダは、自動車用品子会社のホンダアクセスと共同で「踏み間違い加速抑制システム」を開発した。八郷隆弘社長は6月の株主総会で同装置について「開発はすでに終了している。今は発売に向け準備中で近いうちに案内できる」と語っており、7月下旬に発売するめどが立った。

 ホンダの後付け製品は、前方の障害物を検知した状態でアクセルペダルが強く踏み込まれるとエンジン出力を抑える。後退時も一定以上のアクセルの踏み込みを検知すると作動する。まずは保有台数が多い2代目フィットと初代N-BOX向けに発売し、適合車種を順次増やしていく。

 トヨタは1日、「踏み間違い加速抑制システムⅡ」を発売した。2018年12月に販売を始めた後付け装置に、新たな加速抑制機能を追加した。実際の運転挙動をビッグデータとして分析し、前方に障害物がなくても高精度で踏み間違いを推定するアルゴリスムを組み込んである。トヨタは「安全は競争ではなく協調領域で、日本の道路をより安全な状態にしたい」(ミッドサイズビークルカンパニーの田中義和チーフエンジニア)とし、開発成果を同業他社やサプライヤーに無償で提供する考えだ。

 こうした後付け装置をめぐっては、高齢ドライバーの事故防止に一定の効果があるとして、政府が19年7月に自動車メーカー各社に開発を要請し、国土交通省は認定制度も整えた。ホンダアクセスとトヨタの後付け装置はともに国交省の認定を取得している。

 後付け装置を扱う自動車メーカーはこれでトヨタ、ダイハツ工業、スバル、ホンダの4社になる。マツダやスズキも商品化に向けた対応を進めており、近く装置を発売する見通しで、三菱自動車は今夏以降に取り扱う予定。今後はメーカーによる適合車種の拡大や、自治体や販売店などと連携した実効性の高い普及促進策が求められそうだ。