自動車産業は今や、日本の経済成長にとって欠かせない存在になりました。日本車の長い歴史の中で、高品質かつ価格競争力の高さが世界中に受け入れられたことが原動力です。しかし、日本車のグローバル化が進むにつれて、火種も抱えてきました。自動車産業を重要視するのは欧米も一緒。貿易摩擦など通商問題の渦中には必ずと言っていいほど自動車の姿があり、関税などを巡って国家間で激しい議論が繰り返されています。

 日本で初めて自動車の通商問題に注目が集まったのは1970年代。石油危機により、燃費性能が良い日本車の対米輸出が急速に拡大したことで、米国との貿易摩擦に発展しました。日本車メーカーは対米輸出に自主規制枠を設けるなどして米国の貿易赤字の縮小に取り組みました。また、現地生産を増やすなど、海外生産を拡大するきっかけにもなりました。

 実は日本の輸入車にかかる関税はゼロであり、世界で最も開放された自動車市場と言えます。しかし、閉鎖的との海外勢の指摘から、かつて日本車メーカーが輸入車を国内で売る取り組みも行われました。

 21世紀に入って以降は、2国間や多国間での自由貿易の流れが加速。関税ゼロでモノの流れを活発化させ経済成長を目指す動きが本格化してきました。自動車産業も自由貿易協定(FTA)を前提としたサプライチェーンを構築し、商品競争力の向上を実現してきました。現在も東アジア地域包括的経済連携(RCEP)の交渉が進むなど、新たな広域経済圏の構築に向けた動きが広がっています。

 一方、近年はこうした流れに水を差す自国主義も台頭してきました。米国は環太平洋経済連携協定(TPP)を離脱するなど、自国への生産回帰を誘導する政策に切り替えています。欧州連合の離脱を決めた英国を含め、将来の自動車産業にどのような影響を与えるか、注視していく必要があります。