自動車業界は日米協定を評価したが、関税を巡る動きは続く(19年9月26日、経産相と自工会の懇談会)

 2020年も通商問題を巡る緊張感が高まりそうだ。1月1日に、工業製品や農業品にかかる関税を削減・撤廃する日米貿易協定が発効。自動車・自動車部品の関税は「さらなる交渉による関税撤廃」と明記されたが、具体的な関税撤廃期間などについては規定されておらず、継続協議となった。また、日本が議論をリードし、19年内妥結を目指していた東アジア地域包括的経済連携(RCEP)は、インドが離脱を示唆したことで、署名時期は延期を余儀なくされた。

 日米貿易協定は、18年の日米共同声明に沿って交渉が行われ、19年10月に署名に至った。その後、19年12月に日米貿易協定が参院本会議で賛成多数で承認され、20年1月に発効した。

 同協定は、世界の国内総生産(GDP)の約3割(25兆5千億㌦)を占める。18年末に米国抜きの環太平洋経済連携協定(TPP11)、19年2月に日本と欧州連合経済連携協定(日欧EPA)がそれぞれ発効したことを背景に、同年4月以降5カ月にわたる交渉で短期決着した。

 政府によると、関税撤廃率(貿易額ベース)は、日本側が84%、米国側が92%。政府試算では、協定発効による経済効果は、GDPが約0・8%(4兆2千億円)押し上げられるという。

 品目別で見ると、工業品では、日本から米国に輸出する場合、工作機械のマシニングセンターは現行税率の4・2%が発効から2年目で撤廃、3Dプリンターを含むレーザー成形機(3・5%)も2年目で撤廃、燃料電池(2・7%)は即時撤廃される。

 同協定の誠実な履行中は、自動車・同部品への追加関税や数量制限などの措置を課さないことを両国首脳間で確認。日米の新たな貿易協定の最終合意を受けて、日本自動車工業会の豊田章男会長は「自動車分野における日米間の自由で公正な貿易環境が維持・強化されることを歓迎する」とコメントした。

 ただ、協定には自動車・自動車部品について「関税の撤廃に関してさらに交渉」が明記された。米国が日本からの乗用車と自動車部品にかけている2・5%の関税撤廃については今後継続して協議することになる。

 世界の保護主義の動きが広がる中で、16カ国によるRCEPの妥結に大きな期待がかかっていた。RCEPは日本、中国、韓国、インド、オーストラリア、ニュージーランドの6カ国が東南アジア諸国連合(ASEAN)と持つ5つの自由貿易協定(FTA)を束ねる包括的経済連携の構想。経済産業省によると、RCEPが実現すれば、人口34億人(世界の約半分)、GDP約20兆㌦、貿易総額約10兆㌦(世界全体の約3割)を占める広域経済圏が誕生する。

 日本政府は当初、19年内の妥結を目指していたが、同11月にタイ・バンコクで開催された首脳会合で、インドが離脱を示唆。背景には、対中国の貿易赤字が一層加速するとの懸念があると見られる。日本政府は、インドを含めた枠組みで、20年の署名に向けて交渉を継続する考えだ。