私的整理の一つである事業再生ADR(裁判以外の紛争解決)を申請して経営再建中の曙ブレーキ工業は、9月18日の債権者会議で、同社が策定した事業再生計画について取引先の全金融機関が同意したと発表した。37金融機関は総額560億円の債務を9月27日付けで放棄する。これに伴って事業再生ADRの手続きが完了した。

同社は北米事業で見込んでいた部品の受注に失敗するなどして業績が大幅に悪化、事業再生ADRを申請していた。スポンサーとして企業再生ファンドのジャパン・インダストリアル・ソリューションズによる総額200億円の出資を決定し、取引先金融機関に総額560億円の債権放棄を含む金融支援を求めていた。

同日の債権者会議で事業再生計画の一部を見直した結果、取引のある37金融機関全てが560億円の債権放棄に同意した。債権総額の52.5%に当たる。残る債権総額約560億円は2024年6月30日まで元本を据え置き、同日に一括返済する。

事業再生計画では、連結子会社で主にドラムブレーキやホイールシリンダーを製造する曙ブレーキ山陽製造を段階的に縮小して閉鎖する。ドラムブレーキライニング、ディスクブレーキパッドを製造する曙ブレーキ福島製造も縮小する。低採算の小型乗用車向けドラムブレーキ、ライニングの生産を海外に移管し、国内は高い収益が見込まれる電動ブレーキ製品や新構造ブレーキ、産機鉄道及び摩擦材の生産に特化する。

米国ではサウスカロライナ州とテネシー州にある生産拠点2工場を閉鎖するが、生産終了の前倒しや早期転注を納入先と交渉する。最終的には米国は1工場体制とする。

欧州ではフランスとスロバキアの工場について損失が生じない形での提携や売却を検討する。実現できない場合、新規の受注や設備投資、開発を停止し、既存製品の生産終了まで継続してその後に閉鎖する。ドイツと英国の工場も閉鎖する。

アジアは小型乗用車向けドラムブレーキとライニング製品の生産を主にインドネシアに集約するほか、中国の高性能・高級車向けの販売を強化する。