日系自動車メーカー大手の新車台当たり利益が大幅に減少している。2019年4-6月期(第1四半期)の連結業績の営業利益を、グローバル販売台数で単純に割った新車1台当たりの利益が前年同期を上回ったのはトヨタ自動車とスバルだけ。日産自動車、マツダ、三菱自動車は前年同期と比べて大幅に下落した。市場環境が厳しい地域で値引き頼った無理な販売を抑制したことで販売台数が減少している中、先進技術などの先行開発の投資負担を強いられているためだ。日系乗用車メーカー8社で、台当たり営業利益が最も高かったのはスバルだった。

新車販売1台当たり営業利益が最も低かったのは日産自動車で、新車1台を販売した営業利益は1300円にとどまり、前年同期の8万3282円と比べて大幅に低下した。日産はカルロス・ゴーン元会長の追放後、主要市場だった米国でインセンティブ(販売奨励金)を活用した値引き販売で販売台数を稼ぐ手法を取り止めたほか、利益率の低いレンタカーなどのフリート(大口)販売も抑制している。これによって販売費は減少したものの、研究開発投資を増やしており、販売テコ入れのための商品性向上投資も膨らみ、収益率が大幅に悪化した。

三菱自動車の新車販売1台当たり営業利益も前年同期の9万6233円から1万3087円と大幅に下落した。全体の販売台数は増えたものの、将来に向けての研究開発投資や、拡販のための販売費を積み増したことで、利益率が大幅に悪化した。マツダは米国などでインセンティブ抑制施策を継続しているものの、日本や米国、中国で販売台数が想定を下回って販売が低迷。為替差損や、米国新工場関連投資などもあって収益が大幅に悪化した。このため、台当たり営業利益は8万1141円から1万9830円と落ち込んだ。

台当たり利益が上昇したのはトヨタとスバルで、中でもスバルは前年同期の25万7676円から35万0570円と、10万円近く上昇して日系トップとなった。米国の販売が好調なのに加え、インセンティブも抑制できているため。トヨタは販売台数を増やしながら、研究開発費や減価償却費を削減したことで台当たり利益が27万3865円と、前年同期から約1万3000円上がった。

ホンダの四輪車事業は、前年の11万6169円から、9万1067円に下落した。販売台数は伸びたものの、収益率の高い米国や、インドの販売が落ち込んだこと、品質関連費用を計上したことから利益率が悪化した。スズキの四輪車は前年同期の12万6914円から7万3984円と大幅に下落した。スズキにとってドル箱だったインド市場の落ち込みが直撃したほか、完成検査問題を受けて検査体制を再構築するための減産などが影響、販売台数の減少と利益率の悪化によって台当たり利益も下落した。