駆け込み不発でどうなる国内市場

理由の一つと見られるのが消費税引き上げに伴う需要の平準化対策だ。今回の消費税率引き上げでは、駆け込み需要と、その後の反動減という需要が急激に増減する幅を抑えるため、自動車税制が改正される。具体的には、自動車取得税が廃止となり、燃費性能に応じて適用される「環境性能割」が導入されるが、2019年10月から1年間は暫定的に低い税率が適用される。自動車重量税も2019年5月から2年間、エコカー減税が引き続き適用されたが、減税幅はこれまでより低くなる。自動車税についても10月1日以降、排気量に応じて1000~4500円引き下げられる。

これら自動車関連の税制改正によって10月以降、減税となる項目もあることから、ユーザーが「どのタイミングで購入すれば、より安く購入できるのかが分かりづらい」状況で、ディーラーの営業員も「増税前と増税後のどちらのタイミングで購入するとベストかは車種ごとに異なることから、提案しづらい」という。ただ、消費増税前に購入した方が有利とされる軽自動車の販売も低調に推移しており、自動車税制改正を前に買い控えしている人は少ないようだ。

また、今回の消費税率引き上げが、従来と異なって10月に実施されることが影響しているとの見方もある。国内市場で新車の需要期は1~3月で、3カ月間で年間販売の約3割を占める。このため、1~3月の車検時期に合わせて新車に買い替えるユーザーが多い。これまでの消費税率引き上げは4月からだったことから、車検が到来し、消費税率が引き上げられる前に新車に代替えするユーザーが集中したと見られるが、今回は車検到来前のユーザーが少ないことが駆け込み需要が発生していない理由と見る向きもある。

さらに、消費税率10%への引き上げが2度にわたって延期されたことが影響した可能性も。2012年に2014年4月に8%、2015年10月に10%に消費税率を引き上げる法律が成立し、8%は予定通り引き上げとなったが、政府は2014年11月、10%への税率引き上げを2017年4月に先送りを決定、さらに2016年6月には消費税10%への引き上げを2019年10月に再度延期することを決めた。2度にわたる消費税引き上げが延期された間、消費者が計画的に新車への代替えを進めたことから、増税前に急いで購入するケースが少ないと分析する声もある。