スズキが発売したレトルトカレーが売れている。6月25日の発売から2日間で約5千食を受注した。本社(静岡県浜松市)の社員食堂で提供するインドカレーを商品にしたものだ。地元・浜松の事業者と共同で開発した。自動車メーカーの中でもいち早くインドに進出し、現在ではトップシェアを誇る。いまや世界市場への輸出拠点にもなっている。ほかならぬ深い関係のスズキとインド。そのカレー、美味いに決まってる。
今回販売したのは「大根サンバル」「トマトレンズダール」「茶ひよこ豆マサラ」「青菜ムングダール」の4種類。
大根サンバルはインド南部、残りの3つはインド北部を代表するカレーだ。いずれもベジタリアン(菜食主義者)向け。食堂で提供するカレーの中で日本人の従業員からも好評だったため、これらを販売することにした。
ベジタリアン向けのため、動物性原料や乳製品は使っていない。インドカレー特有のスパイスの風味をどのように長続きさせるか、大根などの具材崩れの防止といったさまざまな課題があったが、試行錯誤を重ねてレトルト化を実現した。
パッケージにもこだわった。「ジムニー」「スイフト」「ハヤブサ」「Vストローム」といったスズキを代表するモデルの、ポップなイラストが箱に描かれている。4種類の箱の背表紙を合わせて並べると故・鈴木修相談役と鈴木俊宏社長のイラストが現れる。ちょっとした遊び心も取り入れた。
スズキのECサイト「Sモール」で918円(消費税込み)で販売する。食堂では1食605円(同)で提供している。
記者も4種類のカレーを試食した。以前、インドに出張で訪れた時に現地で食べたカレーと変わらない。スパイスの風味や香りが忠実に再現されていた。正直なところ、「店のカレー」と出されてもわからないくらいのクオリティーだと感じた。レトルトカレーとしては少し価格は高いかもしれない。それでも、材料などへのこだわりから、本格派を好む〝カレー通〟をうならせることもできそうだ、と感じた。
現時点では商品化は4種類の展開だが、鈴木社長は「社員食堂で提供する14種類をシリーズ化し、提供していきたい」と話す。
なぜスズキがカレーなのか。
スズキは40年以上前にインドに進出した。サプライチェーン(供給網)を作り上げ、自動車の普及など、インドの自動車産業の発展に貢献してきた。子会社のマルチ・スズキ・インディアが生産や販売を担っている。現地では4工場を持つ。24年度には210万台を生産し、179万台を販売。同国内のシェアは4割でトップだ。
30年度には、年産400万台体制を整える計画を掲げている。拡大する現地需要や輸出に合わせた投資を進める。 日本国内で人気の「フロンクス」や「ジムニーノマド」もインドから輸入している。
こうしたインドとの深い関係で、浜松の本社にはIT人材を中心にインド出身のエンジニアが多く働く。インドでは宗教上の制約により、ベジタリアンが多い。スズキではベジタリアンが食事に困らないように、30年以上前からインド料理を社員食堂で提供している。
食堂では本場の味に近いインド料理を実現することにこだわった。地元・浜松でレストランやブライダル事業を手がける鳥善(伊達善隆社長)とともに、ベジタリアン向けのカレーなどのメニューを新たに開発し、24年1月から提供を始めた。
スズキのインド出身の従業員も試食などで協力し、本格的なインド料理の再現に成功した。現在ではインド出身者に「母親の味」として親しまれているという。
社員食堂でインド人向けのメニューの質を上げることについて、鈴木社長は「私たち日本人が海外に出たとき、日本食を食べて活力を得ることと同じ。インド人も(インド料理で)活力を発揮する。それぞれの国民・民族に合った食は重要だ」と語る。インド料理は月・水・金曜日に社員食堂で提供しており、計14種類ほどにのぼるという。
(藤原 稔里)