ステランティス傘下の伊フィアットの商用車ブランド、フィアットプロフェッショナルは商用電気三輪車「TRIS(トリス)」を発表した。〝ラストワンマイル配送〟を念頭に開発したバッテリー駆動車で、車体を全長3170㍉㍍のコンパクトサイズに抑え都市部での使い勝手を高めた。最大積載量は540㌔㌘、航続距離は90㌔㍍を確保した。最高時速は45㌔㍍。同ブランドが三輪車をラインアップするのは初で、生産はモロッコで行う。販売は当面、中東・アフリカ地域(MEA)で展開し順次、欧州投入を検討する。
同ブランドは、MEAのビジネスニーズを精査し、四輪車並みの耐久性を持ちカーボンニュートラル(温室効果ガス排出実質ゼロ)に対応する手頃な価格の電動車に商機があるとみて、新型車の開発に踏み切った。現時点で価格は非公表だが、四輪車より部品点数が少ない三輪車とした上で、都市部の低速走行に割り切りドアをなくすなどシンプルなデザインを徹底して競争力の高い価格を目指した。電動化によって燃料代などの維持費を抑えられることも優位性につながるとみている。
トリスは、イタリア語でトランプゲームのスリーカードの意味。欧州の型式認証基準(ホモロゲーション)に合致する設計を施し、3点式シートベルトを標準化するなど安全対応にも手抜かりはない。
車型は、枠付き荷台を備える「ピックアップ」に加え、架装ベース車として車体後部に枠のない平らな床面を持つ「フラットベッド」、キャビンとシャシーのみの「シャシーキャビン」の3種を設定した。ピックアップは青果や家具、砂などさまざまな荷物の運搬に対応可能とする。荷台面積は2・25平方㍍で、欧州標準サイズのパレットを搭載できる広さを確保した。車両総重量は1025㌔㌘だ。
3㍍強の短い全長に加え、最小回転半径を3.05㍍に抑えることで狭路で良好な取り回し性を実現した。シャシーには四輪車同等の亜鉛メッキを施し、長期耐久性の向上を図った。ヘッドライトは「くの字」型の3連LED式として、デザイン性を高めた。
キャビン内は、ドライバーの居住性を最優先したエルゴノミクス(人間工学)設計を導入し、長時間乗務でも快適に過ごせるスペースに仕上げた。5.7㌅サイズのデジタルクラスターを採用し、航続可能距離やバッテリー残量を一目で確認できるようにした。さらにUSB-Cポートと12㌾電源ソケットを搭載して、移動中のモバイル機器充電に対応した。車体ドアをなくしたのは、乗降を頻繁に繰り返す都市部配送のストレス軽減につながるためともする。
パワートレインは48㌾電源で駆動する。最高出力は9㌔㍗(約12PS)、最大トルクは45ニュートン㍍。充電は現地の家庭用電源(220㌾)に対応。充電時間はゼロから80%が3時間30分、満充電が4時間40分。シャシーは前後に12㌅タイヤを採用し、リアのワイドトレッドと長めのホイールベースを組み合わせた設計として安定性を確保した。