欧州の自動車部品メーカーが相次ぎリストラに追い込まれている。世界首位のロバート・ボッシュが世界で全従業員の約1%に当たる最大5500人を今後数年で削減する計画を発表した。シェフラ―やZFも工場を閉鎖し、それぞれ人員を減らす。各社は電気自動車(EV)シフトやソフトウエア・デファインド・ビークル(SDV)化を見込んで積極投資してきたが、足元では裏目に出た。タイヤでは競争激化でミシュランが工場閉鎖を予定する。
ボッシュは車載ソフト部門の約3500人を含む5500人を2027年末までに減らす。人員削減に向けた従業員側との協議やリスキリング(学び直し)などを進める方針を2月に示していたが、リストラにまで踏み込む。欧州EV市場の伸びが鈍化していることや、得意とする自動運転関連部品やシステムの売り上げが想定ほど伸びていない。主要取引先のフォルクスワーゲン(VW)がEV戦略の失敗などから不振にあえいでいることも痛手だ。
ボッシュと同じくVWが主要取引先で、EV向け駆動用モーターシステムなどの電動車向け部品事業に集中投資してきたシェフラーは約4700人を削減する。削減対象はヴィテスコ・テクノロジーズの吸収合併後の約3%に相当し、このうち約2800人がドイツ国内で働く。ドイツでの工場閉鎖は予定しないが、国外5工場のうち2工場を閉鎖する。同じく電動パワートレインに投資してきたZFも28年末までにドイツ国内で最大1万4千人を減らす。全従業員の2割強に当たる規模で「競争激化、コスト圧力、EV需要の低迷により、電動パワートレインなどでリストラをする」と同社。ヴァレオも今後5年で1千人以上を削減する方針だ。
一方、競争の激化によって事業縮小を迫られているのがタイヤ大手のミシュランだ。中国や韓国などアジア製の低価格タイヤが欧州に流れ込んでおり、新車用タイヤのシェアも奪われ始めた。同社はフランス西部ショレとバンヌにあるタイヤ工場の生産を遅くとも26年初頭までに止める。全従業員の1%に当たる約1250人の削減や配置転換を進める予定だ。
欧州の部品各社は、急速なEVシフトに舵を切った域内自動車メーカーの戦略を補完しようとEVや自動運転の関連技術に積極投資し、開発や生産体制を整えてきた。しかし、EV市場が想定より早く息切れし、人とシステムが運転責任をやりとりする「レベル3」(条件付き自動運転)の実用化もハードルが高いことが次第に判明しつつある。VWや米フォード・モーター(欧州事業)など主要取引先の不振が波及したこともあり、相次ぎリストラに踏み切る。
ただ、リストラで競争力が回復するかどうかは不透明だ。ドイツを中心にエネルギーコストが高止まりしていることや、低コストを武器にアジア系自動車部品メーカーがタイヤ以外でも存在感を高める可能性がある。もっとも日本や米国にとっても、決して対岸の火事ではない。こうした厳しい競争の〝洗礼〟を最初に受ける欧州勢の動向が注目される。
(野元 政宏、山本 晃一)