トヨタ自動車とホンダの車両生産が伸び悩んでいる。中国事業の不振が主因だが、燃料高で好調に売れているストロングハイブリッド車(HV)の部品供給が追いつかない側面もあるようだ。電気自動車(EV)で巻き返そうと巨費を投じて開発・生産体制を整えつつある2社だが、増産投資という意味では、ストロングHVとの二正面作戦を展開することになる。実需を踏まえた投資判断が今後の業績を左右しそうだ。
両社は6日、中間決算を発表した。円ドル相場は前年同期から10円程度円安で推移したため、販売台数減による業績悪化をカバーした格好だ。
4~9月の世界販売(実績値ベース)は、トヨタが前年同期比2.8%減の502万台、ホンダが同6.4%減の184万台となり、両社とも2年ぶりに前年実績を下回った。生産面ではトヨタが同7.0%減の470万台、ホンダが同8.1%減の181万台とさらに低い。特に新エネルギー車(NEV)を中心に販売競争が激化する中国の生産台数はトヨタで同17.1%減の約73万台、ホンダも同34.2%減の約38万台と大きく落ち込んでいる。
販売が落ち込む中でもHVは伸びている。トヨタのHV販売は同21.1%増の203万台と過去最高を更新し、HV比率は40.4%に達した。四半世紀前に世界初の量産ストロングHV「プリウス」を投入して以降、グループを挙げてハイブリッド機構の高性能・低価格化を進めてきた。今や台当たり利益は同クラスのガソリン車を凌(しの)ぐ。
世界販売が減少に転じたホンダもHV販売は同0.9%増の42万台とプラスを維持している。トヨタと同じようにHVの増加は収益の押し上げ要因だが、藤村英司CFO(最高財務責任者)は「部品の供給制約もあり、今すぐに台数は増やせない」と8月の決算説明会で明かしている。ホンダはHVの年間生産能力を今の年80万台から100万台にまで増やす方針だ。
今後は、EVとともにHV向けの投資も注目されそうだ。トヨタは認証不正や品質問題に伴う稼働停止が断続的に続く中、開発や生産ペースを意図的に落とす〝踊り場〟を設けている。国内では、HVを中心に納期が半年以上かかる車種も残る。
両社はHVで稼いだ収益をEV事業に投資するシナリオを描いており、ここまでは順調に推移してきた。電動車シフトが進む中、機会損失を最小化し、EVで攻勢をかけるためにも地域やパワートレインごとの投資判断が重要になりそうだ。