スズキ「フロンクス」
トヨタ「ヤリスクロス」

 スズキは16日に発売した新型車「フロンクス」で、〝Bセグメント〟のSUV市場に参入した。同社では全長3.8~4.3㍍をBセグに位置付けている。1ランク下には登録車で「クロスビー」「ジムニーシエラ」がある一方、それ以上のクラスにSUVがなかった。登録車のSUVの品ぞろえを増やすことで、好調な国内販売をさらに伸ばす狙いがある。同社調べによると、2023年度の登録車のSUV市場は前年比16.0%増の約85万5千台と、成長を続けている。人気市場を攻略することで、軽自動車に比べてボリュームが少ない登録車販売の規模拡大にもつなげる。

 スズキの国内販売台数は23年度、同7.5%増の67万4414台で、トヨタ自動車に次ぐ2位となっている。ただ、軽が同7.0%増の55万2251台で首位だったのに対し、登録車は同9.7%増の12万2163台で5位。国内販売でさらに基盤を固めていくには、登録車を伸ばす必要があった。

 そこで目をつけたのが、SUVだ。登録車市場でSUV人気が高まっている一方、今春には「エスクード」の取り扱いを中止するなど、スズキ車の品ぞろえは競合他社に比べて少ない状況が続いていた。ここに、新型車を投入することで巻き返しにつなげる考え。フロンクスは月販1千台の計画を打ち出しており、この分が純増となれば通年で、23年度のスズキの登録車販売の1割程度を押し上げる効果が期待できる。

 ただ、フロンクスが挑むBセグのSUV市場は、競合勢が強さをみせている。同社によると、同市場の23年度の販売台数は同1.5%減の19万6千台。このうち、トヨタ「ヤリスクロス」が半数程度を占めているとみられる。これに次ぎ、トヨタ「ライズ」とダイハツ「ロッキー」も存在感をみせるなど競争が激しい。

 このため、スズキは若年層を意識した商品づくりや販売戦略で、攻略していく考えだ。デザインも若い世代に好まれるクーペのような流線型を用いるなどした。若者の利用が多いSNS(会員制交流サイト)の活用などで、情報発信力も高めた。こうした取り組みにより、事前受注では「30歳代の割合が予想以上に高い」(玉越義猛日本営業本部長)と、手応えをつかむ。鈴木俊宏社長も「告知活動を強化し、新型車の認知度を高めていく」としており、今後もこうした世代をターゲットした活動を続けることで、販売増につなげる方針だ。

(舩山 知彦)