先週、愛知で開かれた「学生フォーミュラ日本大会2024(自動車技術会主催)」の展示ブースでは、多数の自動車関連企業が自社技術を学生にアピールした。愛知県に会場を移して初の開催となった今回は、中部圏内の企業の出展が目立ったほか、電動化領域の技術を紹介する企業が多かった。自動車に造詣が深い学生が参加するイベントということもあり、リクルート活動の場として重要度が増しているようだ。
学生フォーミュラは、学生たちが自作したフォーミュラカーの性能を競い合うイベントで、9~14の6日間にわたって開催された。期間中は、完成車メーカーや部品メーカーが製品を展示するブースコーナーも併設され、過去最多の112社が出展した。
今回から会場を愛知県国際展示場(アイチスカイエキスポ、愛知県常滑市)に移したこともあり、中部に拠点を置く企業の出展が増えた。トヨタ自動車系の部品メーカーはレース関連の製品技術を紹介し、クルマ好き学生の獲得を狙う。デンソーは、トヨタ・ガズー・レーシング(TGR)のル・マン24時間耐久レース参戦車両「TS050」に搭載されたインバーターなどを展示した。アイシンも「スーパー耐久」シリーズに参戦するトヨタの液体水素エンジン車に搭載された水素供給システムを展示した。担当者は「カーボンニュートラル(温室効果ガス排出実質ゼロ)の取り組みは電動化だけではない。当社の挑戦を知ってもらえれば」と話した。
部品各社が積極的にPRしたのが電動化関連技術だ。電気自動車(EV)のコア部品である電池関連では、プライムプラネットエナジー&ソリューションズ(PPES)、プライムアースEVエナジー(PEVE)、パナソニック オートモーティブシステムズ(PAS)などが自社技術を紹介した。オンボードチャージャー(OBC)を展示の中心に据えたPASは「近年のEV化の潮流で電動化技術に興味を持つ学生が増え、(ブースに)質問に来る学生も多い」(担当者)と言う。来場者には自社の就活用サイトを案内しているという。
EVのノイズ対策としてワイヤーハーネスを紹介した矢崎総業のブースには、学生フォーミュラ出身者が説明員として立っていた。「エンジン周りは本などである程度、調べられるが、ワイヤーハーネスなどは独学では限界がある。自分もそうだったが、分からない点があれば、企業の力をどんどん頼って欲しい」と話した。初出展となったミネベアミツミも、エンジニアが対応する相談会を企画。コネクターやベアリングなどの技術相談に応じ、学生との接点機会とした。
超小型EV「クロスケ」を紹介したエイチワンの担当者は「学生は新しいことに対しての関心が高い。クロスケの取り組みやこれからのフレームについて話す機会が多かった」という。また、テイ・エス テックは、展示したホンダ「シビックタイプR」のシートが大好評だったという。同社は、シートや内装部品を手がけているが、EV化が進んでも人が乗り続ける限りはシートが存続する強みを学生にアピールした。
学生フォーミュラ出身者の多くは、卒業後、自動車関連の道へ進む。競技としてだけでなく、即戦力の採用につながる人材イベントとしても活用が進みそうだ。




