スタッフは若手からベテランまで幅広い。特徴は大半がネットからの応募だということ
柴田達寛社長

 柴田自動車(柴田達寛社長、岐阜県坂祝町)は、インターネットを活用した採用活動やマーケティングに注力し、実績を残している。

 きっかけは柴田社長が学生時代に立ち上げた日産自動車のR31型「スカイライン」のウェブサイト開設だ。趣味の一つとして、ネットを活用して仲間を募り、ミーティングやツーリングを実施。2年後には法人化し、R31を中古車オークション(AA)で大量に仕入れ、整備や板金塗装を施し、全国に販売した。また、メーカーで廃番になった補修部品を一定数そろえたほか、エアロパーツを造るなど、オリジナリティーを打ち出した車両を展開した。「R31という同じ車だからこそできること」(柴田社長)と、趣味からビジネスに代わったタイミングを振り返る。今も、ブログによる情報発信を続けている。

 これまでに、外的要因による売り上げの減少に直面したこともあったという。しかし、収益の柱をいかに増やしていくかについて考えるきっかけにもなった。その一つがラジコンだ。ドリフトができるサーキットを作るなどラジコンマニアが注目。彼らが動画で発信したことにより、世間の目に留まった。日本だけではなく、世界に拡散し、台湾やマレーシアなどからもファンが駆け付ける場となった。

 その後、実車のレーシングカーづくりで培ったノウハウをラジコンマシンにも展開し、ラジコンメーカーとしての一歩を踏み出した。R31を扱う中で身に付けた修理技術の蓄積により事業が拡大し、ラジコンメーカー、タイヤメーカー、ホイールメーカー、レーシングチーム運営、保険代理店を含めて6事業を持つ企業に成長した。

 現在、同社で働いているのは50人。その大半は会員制交流サイト「X」や自社サイト、ブログを見て集まった。柴田社長は「中には子どもの頃に、ラジコンサーキットに来たことがある人もいる」とし、「元ユーザーだったり、マニアだったりで、良いものを造りたいという共通の思いがあるから工夫する」と胸を張る。また、「成長のポイントにはいつもネットがあった」という。ただ、「デジタルトランスフォーメーション(DX)とはいえ、やっていることはアナログ。それを効率良くすることがDX」と強調し、今後もDXの推進を加速していく考えだ。

 〈受賞のコメント〉

 柴田 達寛社長

 継続して取り組んできたことに評価をいただきうれしく思う。DXは未来の可能性を考えること。当社は今、30年かけてDXを進めている最中だ。整備工場にとってのDXの初めの一歩は、SNS(会員制交流サイト)などで自分たちのことを知ってもらうこと。存在を世の中に発信していくことが何よりも重要だと感じている。現在、目指しているのは、将来のクリエーターづくり。子どもたちが車を通してものづくりに興味を持てるような仕組みを提案していきたい。

(太田 千恵)