デンソーは、作業手順を動画で記録するなど製造現場で端末をフル活用する
トヨタ紡織は「DXエキスポ」を初開催した

 トヨタ自動車系部品メーカーがデジタル技術を駆使した「カイゼン」を進めている。デンソーは、製造現場で「1人1台デジタルデバイス活動」を進め、工程間の迅速な情報共有や生産設備の復旧に成果を上げている。トヨタ紡織は改善の好事例を社内展示会で横展開し始めた。各社は改善で浮いた経営資源をソフトウエアや生産技術の開発などに振り向ける考えだ。

 デンソーの活動は、製造現場の全員にiPhone(アイフォーン)を配布し、活用を促すもの。コミュニケーションの量や質、働きがいを高めるのが目的だ。すでに国内製造部門で働く約2万人の95%程度まで配布を完了した。今後は、国内外のグループ会社にも展開する計画だ。端末のカメラ機能やコミュニケーションツールを用い、部門や工程の状況を素早く共有できるため、トラブルの解決が半日から1日ほど早まるなどの効果があるという。担当者は「今後もデジタルツール利活用の底上げを行う」と話す。

 トヨタ紡織は、社内展示会「DX(デジタル・トランスフォーメーション)エキスポ」をこのほど猿投工場(愛知県豊田市)で開いた。これまでも「RPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)」発表会などを開いてきたが、DX版は初開催だ。3日間にわたる本格的な企画で、会社支給のアイフォーンで固定資産の棚卸し業務を改善した事例など、成果の横展開を進める。柴田隆宏CDO(最高デジタル責任者)は「一人ひとりの改革をどう加速させるかがテーマになる」と語る。

 中央発條は、稼働管理や工数管理などのシステムを自社開発し、23年度に間接部門の業務を20年度比で4割ほど効率化した。内製化により、社内のデジタル人材育成や、システムの柔軟性確保につながるという。すでにグループ会社に販売しており、今後はシステムの外販も検討する。

 主取引先のトヨタは、2026年から次世代型の電気自動車(EV)で攻勢をかける。本格的な車載OS(基本ソフト)を搭載し、大型アルミ一体鋳造など新たな生産技術を採り入れることが「次世代」の所以(ゆえん)だ。豊田合成が車体前部骨格に前照灯などを組み合わせたモジュール(複合部品)を開発したり、アイシンが電池ケースモジュールを開発したりとグループでも準備が進む。

 こうした新たな取り組みを進めるためにもデジタル技術を駆使した既存事業の効率化を各社は急いでいる。

(堀 友香)