アイシンは電気自動車(EV)シフトを踏まえ、世界規模で生産体制を見直す方針だ。EV向けの駆動ユニット「eアクスル」の生産を中国と欧州で検討するほか、回生協調ブレーキの国内生産能力を増強する。いずれも自動変速機(AT)工場を転用する方針。グループ全体の生産設備や人材を最適配分し、効率的にEVシフトを進める。

 アイシンはeアクスルの開発を加速しており、2025年に小型や大型など車種ごとに最適化した第2世代、27年には容積を半減させた上で複数の機能を一体化した「Xin1機」を投入する計画だ。すでに国内外から20件程度の引き合いがあり、一部のメーカーから受注の内定も得た。

 eアクスルの生産能力は25年に450万基まで増やす計画だ。まずはEVの普及が先行する中国と欧州で現地生産の検討を始めた。国内では、安城第1工場(愛知県安城市)に自動生産システムなどを導入し、生産設備を増やさずにeアクスルを効率良く生産する仕組みを導入した=写真。

 グループのアドヴィックスが手がける回生協調ブレーキはEVにとどまらず、ハイブリッド車などの全電動車向けで需要が増える見通し。今後は、4輪同圧制御を可能にした次世代品を投入するなどし、30年度にはブレーキ事業の売上高を21年度比で6割増やす。生産能力を高めるため、主にAT部品を手がけるアイシンの吉良工場(愛知県西尾市)で回生協調ブレーキの組み立ても始める。

 吉田守孝社長は「EV化が進めば部品も変わり、各工場の仕事量も変わってくる。生産体制はグループ全体でフレキシブルにしていかなければならない」と語る。とくにEVシフトは国・地域によってバラつきがあり、産業政策にも目配りする必要がある。「将来の動向が全く見えない」(吉田社長)中、EVシフトをにらみつつ、グループも含めたグローバルな生産拠点の最適化を慎重に進める方針だ。