保険の提案ではドライブレコーダーについて必ず尋ねる(カーライフサービス多摩車両)

 整備事業者の多くは車検や整備、車両販売などと一緒に自動車保険を取り扱う。保険の契約は年単位のため、車検や整備での入庫と組み合せれば、顧客とのつながりがより強くなるためだ。それを続けるには「この整備事業者なら保険も任せられる」といった信頼を得ることが不可欠だ。顧客が整備事業者に信頼を寄せる理由はさまざまだが、顧客に寄り添える存在となることもその一つ。そのきっかけとして、保険は有効な手段だ。

 顧客の生活環境を踏まえた保険の提案は、車やカーライフを熟知することなしにはできない。その点で整備事業者はすでに顧客の情報を得ており、それがアドバンテージになる。また、車検や整備などに加えてレッカー業やレンタカーを手掛ける整備事業者もある。整備業代理店として、事故やトラブルなど顧客の万が一に寄り添える態勢は整っている。

 マエダ(森山達人社長、大阪府松原市)は、「事故の電話が入ったら一番に優先する」方針を掲げる。車販の商談中でも顧客から事故の一報が入れば、来店者に断った上で事故対応を優先する。同社の大西勝専務は夜遅くに顧客から直接事故の連絡を受けて出社し、運ばれてきた顧客の車を受け入れたこともあったという。その顧客は保険契約を他社に移す予定があったものの、最終的には同社で保険の契約を継続した。大西専務は「(事故対応で)現場に行ったお客さまは、何があっても当社で保険を継続する」と話す。

 アイセイオート(相澤剛社長、宮城県石巻市)は顧客と長く付き合うに当たり、大事なこととして「トラブルで困った時に役に立つこと」を挙げる。このため、同社は事故車両を搬送するためにレッカー業、代車を提供するためレンタカー事業に参入。現場に駆け付けるだけではなく、具体的な解決方法も自社で提供できるようにした。レッカー事業は複数の損害保険会社の依頼を受けており、他社で自動車保険に加入している顧客に対応する時には、同社で契約することのメリットをアピールする。

 日ごろの接点も大事な要素だ。磯﨑自動車工業(磯﨑拓紀社長、茨城県ひたちなか市)は、顧客と接点を持つ機会を大事にしている。店舗ごとに開催する感謝祭で既納客との結び付きを強くし、保険の契約、継続や新たな客の紹介につなげている。また、同社は2022年に創業50周年の節目を迎えた。地元で長く続けてきたことで、これまで利用していなかった地域の自動車ユーザーが入庫するようになったという。磯﨑社長は地域で選ばれるために「社員にとって誇れる会社にしていきたい」と話す。

 東和自動車販売(大山智子社長、埼玉県三郷市)は、6人の整備士全員が保険の募集人資格を持つ。同社の創業者が「カーライフのプロとして車のことだけではなく、保険のことを説明できるようにする」という方針からだ。整備士が車を引き取る時に雑談をしながら、車の使用状況や環境の変化を聞き出して保険の提案のきっかけにしている。大山貴洋副社長は「あまり保険のことでガツガツしていないから、逆に選ばれるのかもしれない」とみている。

 ドライブレコーダーと連動した自動車保険の提案に力を入れるのは、カーライフサービス多摩車両(野口博明社長、東京都昭島市)だ。来店客に行う保険のヒアリングではドライブレコーダーの装着状況を質問している。装着の有無、購入先や保険に連動しているものかまで必ず尋ねる。ドライブレコーダーを装着することで、事故発生時のデータが記録され、「事故に遭った顧客が困らないようにする」(片桐剛取締役)ためだ。社内の勉強会では具体的な話法などを勉強し、「自信を持って案内できるようにしている」(同)。

 ◆月刊「整備戦略」2024年1月号で特集「信頼は保険販売から」を掲載します。