トヨタがタイなど新興国で販売する「ヤリスエイティブ」
トヨタがタイなど新興国で販売する「ヤリスエイティブ」
マレーシアでプロドゥアブランドで販売する「アジア」
会見で謝罪する奥平総一郎社長(右)

ダイハツ工業は4月28日、海外で生産・販売する車両4車種の側面衝突試験の認証申請で不正行為があったと発表した。対象台数は8万8123台。ダイハツの東南アジアの工場やトヨタのタイ工場で生産しており、販売地域向けの出荷は4月27日までに停止した。国内向けの車両の認証試験は適切な手段で行っているという。

不正の対象車種は、ダイハツが開発するトヨタ「ヤリスエイティブ」、プロドゥア「アジア」、トヨタ「アギヤ」と開発中の1車種を含む計4車種。販売地域はタイやエクアドル、マレーシア、メキシコなど14カ国に及ぶ。

今回発覚した不正は、側面衝突の認証試験の際に、生産車両とは異なる加工をドアトリムに施して試験を確実に達成できるようにした。乗員に危険が及びにくい箇所を壊れやすく加工し、鋭角な割れ「シャープエッジ」が乗員に近い位置で発生しないように不正した。詳細は調査中だが、ダイハツの奥平総一郎社長は「(開発期間の制約などで)現場に与えるプレッシャーが強くなっていたのかもしれない」とした。

ダイハツによると、不正な加工を施していない車両を社内で再試験した結果、基準を満たすことを確認したという。このため、販売済みの車両に対する市場措置は予定していない。

不正の発覚は、4月上旬の内部通報がきっかけとなった。通報を受けてダイハツが関連部署へのヒアリング、車両の現物調査、設計変更履歴や開発過程の試験結果の経緯を調べた結果、不正が判明したという。

奥平社長は、組織構造上の問題として、開発機能と認証機能を同一部門で手がけていたことを挙げた。エンジン認証の問題を起こした日野自動車もこの組織構造が不正発生の一因となったが、ダイハツは同じトヨタグループの不正をきっかけに組織構造を見直すプロセスを踏まなかった。また、日野の不正発覚時、エンジン認証の問題については社内調査して問題ないことを確認したものの、側面衝突試験では調査が行えていなかった。

ダイハツは今後、第三者による調査委員会を設置し、不正内容の解明や真因分析を調べる。その結果を踏まえ、再発防止策を決めていく。経営責任については現時点で明言を避けた。

また、国土交通省は28日までに、ダイハツに対して国内生産車に同様の不正がなかったのかを調査した上で報告するように指示を出した。

(2023/5/1更新)