タイヤ設計フローとAI活用のイメージ

 住友ゴム工業はNECと共同で、熟練者が持つタイヤ設計ノウハウを人工知能(AI)化することに成功したと発表した。テストドライバーやテストライダーの定性的な評価や熟練設計者の改良プロセスをAIに落とし込み、開発の効率化と技術伝承に活用する。二輪車用タイヤの開発から活用し、将来的には材料の配合や分析、タイヤ製造まで一貫してAIを活用して効率化を図る「タイヤ開発AIプラットフォーム」の構築を目指す。

 これまで二輪車用試作品タイヤの実車評価は、乗用車と異なり設計者が同乗できないため、テストライダーと設計者とのコミュニケーションによって成立していた。ただ、テストライダーからの感想は専門用語や「ガチッ」といった擬音語が含まれ、特に若手設計者が定性的な評価の意をくむのは難しかったという。

 こうした「官能評価」を理解し、改良する技術の伝承のため、住友ゴムはNECと共同で独自のAIの開発に着手。3人のテストライダーが感じた挙動の評価を「手応え」「剛性」などの項目にデータ化し、さらに改良に向けた仮説を絞り込めるよう、質問を投げかける機能を付与した。熟練の設計者とAI技術者が話し合いを重ね、約1年半を掛けて精度を向上させた。

 また、AIがどのような要因から仮説を立て改良案を導き出したのか、試行プロセスの「見える化」にも取り組んだ。若手技術者は自らの仮説とAIの思考プロセスとを比較することで、開発力を磨くことができるという。

 開発にあたった住友ゴムタイヤ技術本部技術企画部の原憲悟デジタル設計担当部長は「経験やノウハウが主体で効率化は無理と諦めていた部分を自動化し、若手の育成、ノウハウ伝承もできる方法も開発すると意気込んだ」と背景を話す。同社は来年、二輪車用のタイヤ開発からこれを活用する。将来的にはゴムの配合や分析、製造においても活用するタイヤ開発AIプラットフォームの構築を目指す。また、NECは技術伝承に悩む製造業など、他社への展開を予定しているという。