ハイブリッド車(HV)用パワートレインの多様化が進んでいる。トヨタ自動車は燃費よりも走りを重視した新型のハイブリッドシステムを「クラウン」に設定し、ホンダは環境性能とスポーツ性能を高めるシステムを「シビック」に採用。日産自動車は可変圧縮比(VC)技術を活用し、シリーズ方式の「eパワー」を重量の重いモデルにも最適化した。欧州や中国を中心に電気自動車(EV)シフトが進む中、日本勢はさまざまな手法でHVの選択肢を広げ、電動化の多様なニーズに応える。

 HVの多様化を特に重視するのがトヨタだ。新型クラウンでは、シリーズパラレル方式のトヨタハイブリッドシステム「THSⅡ」に加え、パラレル方式の「デュアルブーストハイブリッドシステム」を採用した。

 デュアルブーストは、ターボエンジンとモーター、6速自動変速機(AT)で前輪を駆動し、eアクスルで後輪を駆動する。THSが駆動用と発電用のそれぞれのモーター、動力分割機構で構成するのに対し、デュアルブーストは1つの駆動用モーターを2つのクラッチでエンジン、変速機それぞれとつなぐ。

 THSⅡと別にデュアルブーストを採用した理由は「電動化で顧客の選択肢を広げる」(トヨタ)ためだ。デュアルブーストを搭載する「RS」の燃費は15・7㌔㍍/㍑とTHSⅡ搭載車の22・4㌔㍍/㍑に劣る。一方、最高出力200㌔㍗、最大トルク460ニュートン㍍のターボエンジンをクラッチでつなぐデュアルブーストはダイレクトでトルクフルな走りを楽しめる点が特徴。モーターアシストでターボラグを軽減し、発進時の応答性にも優れる。

 ホンダが新型シビックのHVに採用したシステムは、環境性能を引き上げる一方で走りも重視した。シビックHVには、直噴化などで最大熱効率41%を実現した新型の排気量2・0㍑エンジンを採用。新型エンジンそのものは欧州の排出ガス規制「ユーロ7」などへの対応を見据えて開発したものだが、シビックでは「エンジンのポテンシャルを環境性能よりも走りに振り向けた」(ホンダ)という。「ステップワゴン」のHVに搭載する同排気量のポート噴射エンジンと比べ、トルクを175ニュートン㍍から182ニュートン㍍に向上。加速度センサーでワインディング走行を検知した際にエンジンを停止せずに発電を継続することで再加速時の応答性を高める制御も取り入れた。

 トヨタやホンダが1モーター・2クラッチハイブリッドシステムや直噴化といった既存技術を活用したのに対し、独自技術を使ったのは日産だ。日産が世界で初めて実用化したVCターボ技術を新型「エクストレイル」でシリーズ式ハイブリッドシステムeパワーに組み合わせた。

 エクストレイルでは排気量1・5㍑3気筒ターボエンジンの圧縮比をマルチリンク機構で8~14に変える。これまでのeパワーは同1・2㍑のエンジンと出力100㌔㍗以下、トルク300ニュートン㍍以下のモーターを組み合わせていたが、大排気量化で発電力を強化し、モーターの最大出力を150㌔㍗、最大トルクを330ニュートン㍍に向上。常用域では高圧縮比にし、エンジンを低回転数で維持することで燃費を高める一方、加速時など発電が必要な場面では低圧縮比でターボを活用してトルクを得ることにより、エンジンの回転を抑える。「セレナ」のeパワーでは高速走行時などでエンジン回転数が上昇し、騒音や燃費が悪化する課題もあったが、エクストレイルではこうした課題を解消した。

 欧州や中国を筆頭にEVシフトが進むが、HVの市場も当面は成長局面が続く見通しだ。各社は新型のハイブリッドシステムを開発し、販売拡大を図る。