トヨタは市場投入するEV16台を一気に披露

 2021年の年の瀬、閉館間近の東京・台場の「メガウェブ」で、トヨタ自動車は今後市場投入を計画する電気自動車(EV)を一気に16台も披露した。ずらりと並んだEVの中で最前列に置かれていたSUVが、発売が間近に迫った「bZ4X」だ。トヨタZEVファクトリーの井戸大介車両企画グループ長は、「EVシリーズ『bZ』の第1号車として素性が悪いと、後の車種にも全部だめになってしまう。だから基本性能を徹底的に磨き上げた」と、力を込める。

 bZ4XはEV専用プラットフォーム「e―TNGA」を初採用する。トヨタではすでにレクサスのコンパクトSUV「UX」にEVを設定するが、EV専用車を市場投入するのは初めてだ。ボディーサイズは「RAV4」とほぼ同じだが、専用プラットフォームによってRAV4よりも160㍉㍍ロングホイールベース化し、後席の居住性をワンクラス上の広さに引き上げている。ロングホイールベース化は最小回転半径とトレードオフの関係にあるが、フロントのイーアクスルの左右方向をコンパクトに設計することで、フロントタイヤの切れ角を大きくしている。

 同SUVセグメントのEVでは、日産自動車「アリア」やフォルクスワーゲン「ID.4」など競合がひしめく。ライバル車の後を追う形で登場するbZ4Xだが、「開発をスタートした18年当時はグローバルで見ても競合車はほとんどいなくて、まさに手探り状態で始めた。結果的に他社も同じところを狙ってきたといった印象だ」と井戸グループ長は話す。

 bZ4Xと真っ向勝負となりそうなアリアとは、全長が100㍉㍍長い程度で、ボディーサイズは驚くほど似通っている。航続距離を左右するバッテリー容量は、アリアが91㌔㍗時と66㌔㍗時の2種を用意するのに対し、bZ4Xが71・4㌔㍗時のみ。世界のEV市場で先行する米テスラも「モデル3」では2種類のバッテリー容量から選べるようにしているが、bZ4Xはユーザーの好みで異なる航続距離のモデルを選択できるEVのトレンドには乗っていない。

 バッテリー容量もさることながら、動力性能もスペックだけ見ると派手さはない。アリアの四輪駆動モデルの最大出力は290㌔㍗とスポーツカー並みに高性能であるのに対し、bZ4Xは160㌔㍗。プロトタイプをサーキットで試乗してみたが、EVならではの圧倒的な加速ではなく、力強くはあるものの、他社のEVと比較するとマイルドだ。

 トヨタがbZ4Xでこだわったのは、20年以上にわたりハイブリッド車(HV)で磨いてきた「電費性能」だ。EVのネックである航続距離を延ばすには電池容量を増やすのが手っ取り早いが、電池を増やせばコストも高くなり、さらに車重が増えることで、より大きなモーターが必要になる悪循環に陥ってしまう。より効率良くバッテリーを使い、エアコンなどで省エネ技術を駆使することにより限られた電池容量で事実上の航続距離を延ばす工夫を凝らしている。

 EVでは他社より出遅れを指摘されていたトヨタ。満を持して投入するEVは、「ガソリン車やHVユーザーが違和感なく乗り替えるよう作り込んだ」(井戸グループ長)。あえてEVらしさは打ち消し、トヨタらしい実直なクルマに仕上げてきた印象だ。先頭バッターであるbZ4Xを掘り下げ、トヨタのEV戦略を占う。