物流業界の持続的成長には、ドライバーの労働環境改善が不可欠

 自動車関連の物流企業が、ドライバーの負担軽減やカーボンニュートラルに向けた取り組みで試行錯誤している。ITを活用した配送の効率化が話題に上るものの、情報基盤の整備が十分ではないため「自動車関連ではまだ難しい」との見方がある。また、大型車両を使用する物流企業トップは当面「配達車両にEV(電気自動車)を導入する考えはない」と言う。その一方で「船舶輸送」というモーダルシフトの再検討が効果的という声が挙がるなど、独自の視点で課題解決に歩みだしている。

(赤石達真)

 佐川急便は、2030年までに配達用の軽自動車約7200台を自社開発のEVに代替することを決めた。温室効果ガスの削減を目指すと同時に、デジタルタコグラフなどを活用したITによる配送効率の向上を狙う。こうした動きは物流業界の変革の象徴ととらえられている。

 ただ物流業界では、人手不足の解消が課題となっていることに変わりがない。ドライバーの拘束時間が長く就業を敬遠する人が増え、高齢化が進んできたという状況が改善されなければ、経営の根幹となる人材は確保できない。

 ドライバーの拘束時間を減らすアイデアとして「混載物流」に取り組む企業がある。企業単位での貸し切りチャーター形式ではなく、複数荷主の荷物をまとめて配送し、積載率向上につなげるものだ。複数の物流企業がトラックを共有する「共同配送」という仕組みもある。

 現在は工場のIoT化(モノのインターネット化)が進み、製造業の顧客からより細かく、荷物の到着日が指定されるようになった。物流各社はその要求に応えるため、積載率が低い状況でも配送せざるを得ないという事情がある。これもドライバーの拘束時間が減らない要因だ。こうしたロスの改善を支援するため、ゼンリンをはじめとする地図会社が配送効率を高めるDX(デジタルトランスフォーメーション)を使ったソリューションの展開を始めた。

 ただ、自動車関連の物流企業では、他業種と比べDXの浸透が遅れ気味。例えば、自動車部品物流の大友ロジスティクスサービス(松村豊人社長、東京都江東区)や完成車輸送のゼロは、複数荷主の荷物を効率的に届ける配送計画を立てているが、両社とも現在、その立案を「人手による配車管理」に頼る状況だ。

 両社とも、いずれはDXに対応していく姿勢だ。しかし、大友ロジスティクスサービスの松村社長がDX導入は「1社単独ではできない」というように、技術を手に入れるだけでは恩恵を引きだせないという難しさがある。

 恩恵を得るには、複数企業の顧客のデータを1つの情報基盤に載せる必要があるが「(自動車部品物流の)業界では、まだそういったプラットフォームがない」(松村社長)のが実情だ。

 ゼロは、車両陸送で顧客への受け渡し時に行う車体の傷など状態検知にカメラなどを活用したDXソリューションの導入を検討している。まずは、他社との顧客基盤の共有が必要ない「1社単独でできるところから始める」方針だ。時期を見て、配車管理や配送ルートの選定にもDXを取り入れる考えだ。

 同社の北村竹朗社長は、ドライバーの負担軽減では「船舶輸送が有効」と語気を強める。配送地点までトラックと船を上手く掛け合わせることで「トラックドライバーの過重労働」を抑制できると見る。大友ロジスティクスサービスの松村社長も「大型トレーラーを導入することでドライバー一人ひとりの負担を減らせないか考えている」と、DXに依存しない業務改善を模索している。

 同時に、物流各社が経営課題に挙げるのはカーボンニュートラルだ。その対応では、佐川急便やヤマト運輸のように、配達車両にEVや燃料電池車(FCV)を先行導入するケースがみられる。

 しかし、大型トラックのEVやFCVはまだ開発途上の段階で、普及にはしばらく時間がかかる。こうしたことから、物流各社は足元の温室効果ガス対策でも船舶輸送に期待を示している。ホンダ自動車の部品物流を手掛けるホンダロジスティクス(藤田泰彦社長、東京都千代田区)も「船便の活用はカーボンニュートラル実現のため」とした。

 製造業などでは現在、効率化や環境対応には物流を含むサプライチェーン全体のマネジメント(SCM)改善が欠かせないという考えが主流になった。「コロナ禍を機に物流改善に本腰を入れ始めた企業は多く、物流の価値がより重要視されるようになった」(大友ロジスティクスサービス松村社長)と、物流の存在感向上に商機を見いだす。自社の人材や環境対応の取り組みで得たノウハウを、荷主のSDGs(持続可能な開発目標)達成の支援などに生かしていくアイデアが、今後のビジネス獲得の糧になりそうだ。