JSRは11日、タイヤ向け合成ゴムなどのエラストマー事業をENEOS(エネオス)に売却すると発表した。JSRがエラストマー事業の承継会社を12日付で設立し、ENEOSがその承継会社を2022年4月1日付で完全子会社化する。売却額は1150億円から運転資本などを調整して確定する。JSRはエラストマー事業で早期退職者募集など構造改革に取り組んでおり、今後は半導体製品を中心としたデジタルソリューション事業とライフサイエンス事業に注力する。

 売却の対象は、エラストマー事業を手がける四日市工場の一部と千葉工場、鹿島工場、本社のエラストマー関連事業部門とグループ会社、海外ではタイやインド、韓国、ドイツなどとなる。同事業に関わる従業員は約3千人。ENEOSは買収条件としてエラストマー事業の構造改革で約60億円規模のコスト削減完了を前提としており、JSRは「達成できるとみている」(川橋信夫社長)。

 21年3月期決算で、JSRのエラストマー事業の売上高は1431億円、コア営業損失は17億円だった。今期は構造改革の成果などで黒字を見込む。

 ENEOSグループは、40年の長期ビジョンで機能材事業を成長分野としており、新たな素材事業の獲得で事業拡大を図る。