世界に先駆けて登場した自動運転レベル3

 ドライバーに代わってシステムが運転する自動運転「レベル3」(限定領域での条件付き自動運転車)の市販化が日本で始まった。世界に先駆けて登場した自動運転レベル3車だが、高速道路でのハンズオフに代表されるような運転支援の車に比べて作動領域はまだまだ限られる。レベル3の商品化が日本の自動車業界にもたらす意味や、自動運転を巡る自動車メーカーと政府の対応などを取材した。

 昨年11月、国土交通省はホンダの上級セダン「レジェンド」に対し自動運転レベル3の型式指定を実施した。審査開始から認証までにかかった期間は8週間。前例がない中で、国交省はホンダからのヒアリングを基に「定性的な国内保安基準を一つずつ定量化」(自動車局幹部)しながら審査する作業に時間を割いた。

 自動運転レベル3がレベル2と異なるのは、システムが運転の主体となる点だ。装置が正常に作動している状態で事故が起きた場合は原則、システムが責任を負うこととなり、優秀なドライバーと同等の運転技能が車側に求められる。

 ホンダが型式指定を取得した「トラフィック・ジャム・パイロット」は高速道路上の渋滞時に時速30㌔㍍以下で作動し、時速50㌔㍍以上になると切れる。いくら条件を限定しても、二輪車の急な割り込みや落石、天候の急変など「リアルワールドにはさまざまな条件がある」(自動車メーカー)ため、自動走行中は多くのリスクを抱える。

 保安基準にある「システムが要件に満たさない場合は作動状態にならないこと」という定性的な要件に対しては中央分離帯がない場所や凍結路面、前走車が二輪車の場合は作動しないといった形で具体化した。「基本的には全部の条件を網羅する」(自動車局幹部)とし、作動条件下ではシステムの安全性を保証する。

 優秀なドライバーでも避けられないような逆走などのシーンに遭遇した場合は、不可避であっても緊急停止するなどリスク最小限措置を取る。その上で作動状態の記録装置の情報を基に司法判断を仰ぐ。ホンダの審査を通じて、国交省は「今回前例が一つでき、白紙のところから安全の判断基準ができた」(同)と手応えを示す。

 昨年4月の法改正により、国内で自動運転車が解禁された。警察庁は国連欧州経済委員会(UNECE)傘下の道路交通安全グローバルフォーラム(WP1)に参画している。改正道交法で認める自動運転中のスマートフォン(スマホ)操作について、国連では細かくは定義されていないが「その解釈の余地がないかというと必ずしもそうではない」(警察庁幹部)と主張。自動運転を見据えたジュネーブ条約改正の議論の行方を気にする自動車メーカーの声に対しても「そのことは承知しているが、条約をどう変えていくかの議論は今後あり得る。この技術を使ってはいけないといった空気感は全くない」として国際協調を図る。

 国連の自動車基準調和世界フォーラム(WP29)では、時速60㌔㍍以上の国際基準策定に向けた動きが本格化する。時速130㌔㍍まで速度域を引き上げることやレーンチェンジの基準策定が進めば自動運転の利便性がより高まる一方、自動車メーカーからは現状の技術レベルを考慮すると時期尚早との指摘もある。国交省は、メーカー側の開発状況に応じて基準づくりや国際的な議論を進める考えだ。