商用車分野でもデジタルを活用した車づくり、新サービスへの対応が喫緊の課題

 経済産業省は、トラック物流の目指すべき将来像とその実現に向けた取り組みの検討を狙い開催した「物流分野におけるモビリティサービス(物流MaaS)勉強会」の成果をまとめ公表した。勉強会は大学、商用車メーカー、民間企業などの識者・専門家らが参加し2019年12月開始。デジタルツールによる荷主マッチングや電動商用車といった技術トレンドを踏まえながら効率化、環境対応をはじめ物流を取り巻く課題解決の方向性を探った。そして勉強会の成果を基に、20年度から物流MaaSの具体化を進めている。

 トラック輸配送は、国内貨物輸配送(重量ベース)の9割を占め15兆円規模の市場を持つ。さらに、全産業平均で売上高に対する物流コストの比率が約5%に上るなど、国内重要産業となっている。

 ただ、このところの物流現場ではさまざまな課題が散見される。大きな課題の一つが、ドライバー不足で悪化した労働環境の改善。さらに、貨物の小口化に伴う積載率低下によって運搬物の重量当たりエネルギー消費が増加したため、環境対応、収益への影響が懸念されている。

 これに加えデジタル化の遅れが深刻な状況を招きつつある。中小零細企業の設備導入、業界内外を横断したデータ連携がなかなか進まず、ITを活用した効率化の基盤整備がいまだに完了していない。

 同時に、自動車業界は「100年に1度の大変革」を迎え、CASE(コネクテッド、自動運転、シェアリング、電動化)を軸とした新しいモビリティの実現に迫られている。トラックなどの商用車分野でもデジタルを活用した車づくり、新サービスへの対応が喫緊の課題となった。

 勉強会では現状や課題、デジタル化などのトレンドを踏まえつつ、物流の目指すべき将来像やその実現に向けて商用車業界が取り組むべき方向性などを検討した。メンバーは有識者や商用車メーカー、物流事業者、ITソリューション関連など民間企業の23人。座長は筑波大学の石田東生名誉教授が務めた。

 課題解決を実現して物流事業者、利用者の双方に新たなメリットをもたらすことが、社会の持続的な成長基盤づくりに欠かせないということを念頭に、物流MaaSの具体的な方向性を描いた。

 まず物流業界の抱える課題の解決に貢献することを目指し、荷主・運送事業者・車両の物流・商流データ連携と物流機能の自動化の合わせ技で「最適物流を実現し、社会課題の解決及び物流の付加価値向上を目指す」将来の〝物流MaaSの実現像〟を設定。商用車メーカーが車両のコネクテッド化やデジタル技術の提供を通じて荷主・運送事業者などを支援し、共同輸送や混載配送・輸配送ルートの最適化などによる物流の効率化を実現していくことが必要だとした。

 これを受けて、商用車業界が「日本版FMS(フリート・マネジメント・システム)標準」などを活用し、複数メーカーのトラック車両のデータを集め一元的な運行管理を可能にするデータ連携の仕組みを確立する方針を打ち出すなど、実現像の〝実現〟に向けた動きが活発になってきた。

 物流MaaS実現像のまとめでは、すでに実証試験や試行が開始された事例を挙げながら、具体化の方向性を提示した。

 幹線輸送の将来像については「車両の大型化・自動化により1台(運転手1人)当たり輸送量が飛躍的に増大」することが重要とした。その取り組みの一例として、大手輸送事業者が運用エリアの規制緩和に合わせてダブル連結トラックの導入を拡大していくことを挙げた。長距離輸送では、中継地点でのドライバー交代によって運行負担が軽減できるとした。

 輸送量の拡大では、先頭の有人運転車に連携して複数の無人運行車が隊列走行する「後続車有人隊列走行システム」にも期待。さまざまな商用車メーカー(マルチブランド)の車両による隊列走行や、夜間走行の実証試験を展開し、課題の抽出・解決が進んでいるとした。

 幹線輸送における輸送のマッチングでは、すでに米国で世界最大規模のマッチングサービスが実用化され、運送事業者向けのデータベースサービスや運送コスト、需給マップの可視化サービスなどを提供していることを紹介。国内でも求貨・求車マッチングサービスの提供が開始され、運送事業者の遊休資産の有効活用、つまり輸送能力の最大化に向けた施策が前進しつつあるとした。

 また、工場の周辺や港湾ターミナルなど限られたエリアで自動運転トラックを活用する「域内自動運転」を日欧の商用車メーカーが開発中で、商用輸送サービスへの展開に注目した。

 積み荷の受け渡し、積み替えを行う「結節点」のIT化推進も、物流MaaSが目指す効率的な輸送で大きな鍵を握る。トラック運行状況と連動した荷役場(バース)の予約システムについては、ドライバーがスマートフォンで事前予約を可能にすることと、作業に最適なバースの自動割り当てが欠かせないと提言。予約システム導入によって平均待機時間が半減するなど、具体的な効果も示した。

 さらに標準規格パレット、RFID(非接触式の電子タグ)付パレットの活用が積載効率の向上や積み荷の見える化(管理の効率化)、共同輸送におけるスムーズなデータ共有化に役立つことを事例とともに挙げた。

 このほか、エネルギー消費の効率化を軸とした環境対応では、支線配送(荷物の届け先への配送など地域内物流)向けの電動トラックの実験、積荷の特性や路面状況に応じて適切な輸配送ルートを設計する物流支援システムなどの成果を紹介。併せて体格・体力に関わらず使いやすい〝ドライバーから選ばれる〟車づくり、ドライバー生体情報を活用したリアルタイムの安全運行管理システムの必要性を打ち出した。

 また、物流効率化と持続性追求を実現するモデルとして、アプリケーション・プログラミング・インターフェース(API)標準化とIoT(モノのインターネット)の促進による物流版インターネット構想の実現を提言した。

 勉強会の間、参加者からさまざまな意見を集めながら議論を深めた。「想定されるビジネスモデル」に関しては「各商用車メーカーのサーバーから標準化データ項目をAPIを通じて連携していく方向性が良い」(ITインフラ事業者)、「誰でも有料で情報活用できる仕組み。理想は定義されたデータをすべてクラウドに挙げること」(商用車メーカーなど)といった意見が上がった。

 「見える化・混載による輸配送効率化」では「輸送事業者間で協力して積み荷地、空き積載量、到着指定時刻に基づくトラックマッチングの取り組みを進めるべき」(輸送事業者)、「さまざまなシステムの共有プラットフォームを民間の自助努力だけで構築するのは困難である。(国に)横断的な推進に向けたリーダーシップを望む」(荷主事業者)と、事業者間の連携と国の支援が欠かせないという声があった。

 電動商用車の活用では「今の内燃機関よりもトータルで良いとの判断、もしくは電動車両を使わなければならない環境などが商用車ユーザーになければ普及はしない」(商用車メーカー)、「使いたい時にリーズナブルに使えない」(荷主事業者)、「ランニングコスト低減に向けたバッテリー保証制度・バッテリー交換時の安価リビルド品の提供が必要」(運送事業者)といった見解や要望が寄せられた。

 経済産業省は、勉強会の取りまとめを踏まえて今後、国土交通省と連携しながら商用車メーカー、物流業界、ITソリューション事業者などの民間事業と協業。さまざまなアイデアを具体化できるように、物流業界の抱える課題解決に注力していく。