神戸製鋼所が「オートモーティブワールド」に初出展したマルチマテリアルドア
JFEスチールのトポロジー最適化技術で樹脂補強したドア

 車両の軽量化ニーズで、鋼材やアルミニウムなどの金属や樹脂を適材適所に組み合わせて活用し、コストを抑制しながら最大限の軽量化を目指すマルチマテリアルが注目されている。軽量化提案に注力する素材メーカー各社では、マルチマテリアルの採用が先行する欧米メーカー向けにも提案先を拡大しつつある。ドアパネルの試作提案などが目立つ中、マルチマテリアルのさらなる用途開拓による採用部品品目の拡大が急がれている。

 神戸製鋼所の山口貢社長は「鉄とアルミと溶接の3領域の技術力が当社の強みであり、マルチマテリアル化を進めるのが当社の存在意義だ。需要の多い欧米系メーカーにも提案していく」と力を込める。同社は1月中旬に開催された「第12回オートモーティブワールド」にアルミと鋼を使ったマルチマテリアルドアの試作品を初出展した。ドアのアルミインナーの板厚を0・8㍉㍍に薄肉化したほか、サッシュフレームを鋼板化したことで、アルミドアに対して軽量化コストを約60%低減したほか、鋼板ドアに比べ約40%軽量化した。同社は今後、素材開発にとどまらず、解析力を生かした構造設計力や異種材料の接合技術力といった強みを生かした提案を強化する方針だ。

 JFEスチールは、鋼板の外板を薄くする一方で、同社独自のトポロジー最適化技術を生かして成形した樹脂での補強でドアの張り剛性を確保するマルチマテリアルドアをすでに試作済みだ。ドア1枚につき500㌘弱軽量化できる。樹脂部分にGFRP(ガラス繊維強化プラスチック)を採用すれば、強度を確保しつつもコスト低減が可能で、外板のアルミ化と比較してもコストが低いとする。

 一方で、マルチマテリアル化における同社の優先目標は、骨格部品での採用だ。フロントサイドメンバーやリアサイドメンバーなど、車両が衝突した際に変形してエネルギーを吸収する部品での採用を目指している。1・2㍉㍍程に薄肉化した高張力鋼板と柔らかく接着性の高い少量の樹脂を抱き合わせることで約10%の軽量化が可能とする。同社のスチール研究所薄板加工技術研究部の樋貝和彦主任研究員は「変形しない部位でのハイテンと樹脂によるマルチマテリアル活用は珍しくないが、当社は変形部位での採用で同一質量で吸収エネルギーを10%向上させる技術を開発した。骨格部品での採用に期待したい」と語る。

 帝人も、マルチマテリアルによるドアモジュールを開発し、昨年3月にフランスで開催された世界最大のコンポジット展示会「JECワールド2019」に出展した。シートモールディングコンパウンドや一方向性のガラス繊維強化樹脂を組み合わせることで、強度を維持しつつスチール製ドア比約35%軽量化した。帝人グループ執行役員で帝人の複合成形材料事業本部長を務める中石昭夫氏は「コンセプトから設計、プロトタイプまでほぼ自社で製作した。現在自動車メーカー各社に提案し、チューニング段階だ。数年以内にマルチマテリアル案件を具体化したい」と期待する。

 軽量性やコスト、強度、生産技術など各要素のバランスが鍵となるマルチマテリアルは、量産採用までの過程に多くの試験、評価プロセスが必要なため、軽量化手法として高い関心を持たれつつも、量産採用がなかなか進まないのが現状だ。採用の加速には、メーカーの開発初期段階から参画する高い提案力が素材各社に求められている。

(長谷部 万人)