写真6 中世の街エアフルト市の名物は橋の上に立つお店や教会(イタリアのフィレンツェやベニスにも橋の上の店はあるがエアフルト市のは本格的な店)
写真7 フランクフルトショーにおけるアウディのブースでの電気自動車のキット化展示。ドイツ自動車経営研究所の調査だと電気自動車の部品点数は従来型の5分の1程度であると
写真8 ボルボの投資家説明会資料で「小型商用車用の電気チャージポイントの普及は全く遅い状況」と批判している
写真9 ボルボの投資家説明資料で「大型は燃料電池車が妥当だがこれとてインフラが全く整備されていない」と普及に疑問符を付けている。後ろは水素スタンド 
写真10 2019年秋の東京モーターショーで発表された三菱ふそうの燃料電池車ヴィジョンF 実際走行可能な車両2台作製したとのこと
写真11 e-Actros(モデル・アクトロス)電気自動車 走行距離は200㌔㍍で近距離輸送用トラック プレスフォト 〝100%電気走行〟と記載されている

(前回から続き)

 VWのゴルフセグメント第3世代モデルiD.3電気自動車は生産がツッビカウ工場で11月4日始まったが、いまだ十分なバッテリーがサムソンSDIより供給されていない報道あり(11月5日付HB紙)。

 (1)電気自動車のコア部分のリチウムイオン電池を中国・韓国勢に任せるリスクはEU委員会でも度々指摘され(平成31年4月20日付本紙参照)、VWがスウェーデンのスタートアップ企業【ノースボルト社】と合弁を設立、VWザルツギッター工場でセル含むバッテリー生産を計画している(2022年より)。

 (2)ダイムラーはセルだけ外部購入しバッテリーそのものの組立は世界6カ所で自社で行う(平成31年4月27日付本紙参照)。

 (3)BMWは基本設計と開発をCATL中国勢と共同で行う。自社生産は現段階では考えていない。

 電気自動車の部品はエンジン自動車よりかなり部品数が少なく、アウディが「キット販売可能」と言わんばかりの展示をフランクフルト・モーターショーで行った(写真7)。

 全体の生産コストを分解するとバッテリー部分で3~4割を占め、最大のコスト。このコストを如何に自分でコントロールするようにするのかが大きな課題(要は技術革命を経て自分で生産するしかない)。次なるコストは駆動関係のモーター・インバーター関連で15~25%を占めるが、現在でもさすがドイツ車はドイツメーカー中心に採用をしている。部品メーカーは「ボッシュ、コンチネンタル、ZFフリードリヒハーフェン、シーメンス、マーレ等」で略全てドイツメーカーで、一部日本製も採用されている(米国向けモデル)。(資料は三菱商事調べ)

 B トラック・バスの排ガス(燃費規制)

 過去25年にわたりトラック業界の努力によりNOxは95%、PMは98%削減され、CO2も年率平均で1・2%削減されている。これに対しEU委員会は;

 ①19年のCO2の平均値を基準として25年と30年と2段階に分けて削減実行する

 ②25年までには15%、30年までには30%削減する

 ③乗用車の測定方法(CO2値と燃費)はWLTPであるがGVW7・5㌧以上の商用車(M/HDT)はVECTO(表6)とする

 《VECTO》は乗用車と異なり商用車はバリエーションが多く実車試験が行えないのでコンピューターのシミュレーションをベースにして燃費を算出するもの。インプットのパラメーターは8つ。車両特有スペック、空気抵抗、転がり抵抗、車両重量、燃料消費量マップ図、アクスル損失、ミッション損失等で車両を更に細かくカテゴリーに分け(車軸、使用用途、車両クラス等)、それにドライビング・サイクル(長距離、地域輸送、市街地輸送、公共事業、建設用途)を加えてかなり手間を掛けて実際の走行に近い形でのシミュレーションを行い、アウトプットは①CO2値=g/t-㌔㍍②燃費=リッター/100㌔㍍(EU方式の燃費表示)である。

 日本は15年より燃費規制が開始されており、VECTOと同じ考えを盛り込んだ燃費規制が25年から始まる。日本はGVW3・5㌧以上だが欧州は7・5㌧以上が対象で3・5㌧クラスは乗用車の範疇の考え方だが、詳細は未定。

 これらの提案に対し自工会ACEAとしてポジションペーパー(意見書)を発表

(08年から17年まで10年かけて検討されたツールで19年1月より適用されている)

 問題はEU委員会の要求するCO2の規制値で(表8参照);

 ①25・30年とツーステップで削減を実行する方法は賛成

 ②過去平均約1・2%のCO2削減が実現され、EU委員会の決定した19年ベース値で5年で15%、次の5年までにさらに30%削減は現在の技術では達成不可能で25年までに7%、30年までに16%削減目標が現実的とACEAは反論。ただし22年に30年の目標をレビューすることを前提とする条件

 ③電気自動車にせよ燃料電池車にせよ充電ポイントは乗用車とは異なり(乗用車より大きいし充電に時間を要する)、乗用車のサービスポイントは使用出来ず新規に設置必要(特に燃料電池車用水素ステーションは欧州全体でも

266カ所しかない=2019年1月発表ACEAの提案書)で商用車用のインフラが欠如している。商用車の場合PHEV(プラグインハイブリッド)は検討に値しない(写真8・9)

 ④上記とは別にダイムラーは「39年までにCO2を排出しない新車トラック・バスを発売する」と公言。ただし条件を付し;

 (イ)ディーゼル車より価格が高くなるので普及には各国政府の車両購入補助金や通行料金免除

 (ロ)水素ステーション等のインフラ構築

 (ハ)水素輸送と燃料補給の統一基準が不可欠

等をしてきている。ダイムラーは19年秋の東京モーターショーで水素電池コンセプトモデル「Vision F-Cell」を初公開した(写真10)。

 商用車GVW7・5㌧までは乗用車と同じWLTPの測定?

 この辺はグレーゾーンと言われるがダイムラーの11月からの組織変更を見ると「小型商用車=ヴァンタイプ」はメルセデスベンツ乗用車会社の取り扱いになっている。このクラスを販売している商用車メーカーはダイムラー(メルセデス・ベンツ)、VWのトラトン傘下のMAN、傘下にイベコを持つCNHであり商用車メーカーのボルボ・トラックスはこのクラスの小型車はUDトラックスのみで、あとは乗用車メーカーの販売する小型商用車となる。

 いずれはEU委員会が正式に決定する必要があろう。

 商用車も電気自動車化?

 EU委員会のCO2規制が決まり、各商用車メーカーはCO2削減のために具体策実施をする必要に迫られた。燃料電池車がまだ先の話であり、ボルボやダイムラーはまず電気自動車での対応を実施。ただし大型車が入っての25年まで15%削減とこれまでの倍の速さで削減が要求される段階で販売台数のうちどのくらいの電気自動車が必要か不明。

(ドイツ自動車史研究家)