2029年3月期を最終とする5カ年の中期経営計画で〝人的資本強化〟を掲げたアップガレージグループ。来春入社の新卒者数では同社として過去最多の50人を見込み、外国籍人材も大幅に増える見通しだ。採用手法や人材育成の取り組みについて人事・総務部長の張琳イ執行役員に話を聞いた。

 ―今春の新卒採用の実績と来春の計画は

 「今春の入社人数は24人で、来春は50人の入社を計画した。事業拡大をよりスピードアップして実施するためには人的資本を一層強化する必要があるため倍増する。中計の目標を達成する上でも今から50人ほどを採用し、育成していかないと間に合わない」

 ―外国籍人材の採用は

 「26年卒向けに海外のSNS(会員制交流サイト)で採用情報の発信を始めた。SNS経由の応募は想定以上に多く、約100人がエントリーした。SNSでは当社情報のほかに日本で就職する際のアドバイス的なコンテンツも多く発信している。正直、留学生向けの採用イベントよりも圧倒的にSNSの方が有効だ」

 ―今春入社から初任給30万円を打ち出した狙いは

 「優秀な人材を採用するためには、その優秀な人材に見合う金額を提示しないと集まらないという背景が一つある。また、当社の考え方としては優秀な人材を採用できれば、顧客へさらにより良いサービスが提供できる。そして顧客から選ばれることで当社の収益も上がり、社員へ還元できる。こういったサイクルを回したい考えが根底にある」

 ―大卒と大学院卒の初任給30万円には固定残業代5万6千円(30時間分)が含まれる。新卒者の平均的な残業時間は

 「データを出したところ20時間程度だった。基本的には30時間を下回っている状況だ。当社は繁忙期と閑散期があり、閑散期は残業がほとんどないため繁忙期と比べて給与の差が出てしまう。一方で固定残業代を取り入れることで繁忙期との差が縮まり、給与がある程度安定する」

 ―福利厚生の特徴は

 「社員の健康と成長、資産形成を軸としている。禁煙手当やジム手当などを実施しており、社員1人当たり2、3個は手当を申請している。資産形成では社員向けに金融リテラシーを高めるセミナーを始めた。社員持ち株会や企業型確定拠出年金も始めた」

 ―若手人材のフォローや育成の取り組みは

 「メンター制度がある。新入社員1人に入社2~4年目の先輩社員がメンターとなり対応する。『1on1ミーティング』を実施して仕事の進め方や悩み相談を受け、不安の払しょくなどにつなげる」

 ―キャリア採用にも力を入れ始めた

 「今期から第二新卒を含むキャリア採用にも力を入れている。明確な目標を設定して採用体制も整えた。今までのキャリア採用はエージェントから紹介があったら面接する程度で積極的に実施していなかった。現在は担当者を置いて当社から積極的に求職者へ情報を発信し、母集団形成を実施している」

 ―次世代の管理職や経営者の育成も体系化した

 「会社が発展するためには次世代の管理職や経営者の育成は欠かせないため、昨年から階層ごとに分けて研修を実施している。実際、リーダー候補として十数人が研修を受け、経営者候補では4人が研修を受けた。私も昨年、次世代経営者研修に参加した。今年についても、階層別の研修プログラムをどのように組むか河野映彦社長と話し合っているが、昨年と同様の規模感で実施すると思われる」

 〈プロフィル〉ちょう・りんい 早稲田大学大学院卒。2014年アップガレージ(現アップガレージグループ)入社。越境EC(電子商取引)やアプリの立ち上げなどの業務に従事。20年4月マーケティング部長、23年4月執行役員(現任)、25年4月から人事・総務部長。1987年12月生まれ、37歳。中国・上海出身。

(梅田 大希)