日立金属は29日、磁性材料事業の再生に乗り出すと発表した。同事業は需要低迷の長期化や電動車向け磁石の価格競争の激化で収益性が悪化し、2019年4~9月期には約400億円の減損損失を計上した。生産体制の見直しや人員削減を進め、機動的でコスト競争力を重視した事業戦略への転換を図る。

 19年4~9月期決算(国際会計基準)の磁性材事業全体の売上高に当たる売上収益は、前年同期に比べて2桁減少し、調整後営業損益は赤字に転落した。ファクトリーオートメーションやロボットが低迷した影響で、希土類磁石の需要が大幅に減少。電動車向けは需要が見込めるものの、価格競争力で後れをとった。早期の回復は見込めず、425億円の減損損失も計上し、役員報酬も一部を返上する。

 同日の決算説明会で佐藤光司社長は「前中計で収益性を高める投資ができていなかった」と説明した。19年度上期にその影響が顕在化。磁性材事業の再生では複数の生産拠点を閉鎖し、拠点の統合も検討する。開発や生産のコストダウンにも取り組む。一方で、将来的に需要が見込める海外拠点(中国、フィリピン)は生産比率を高めるなどによって「在庫調整にも機動的な生産体制を敷く」(佐藤社長)ことで磁性材事業を立て直す。

 固定費も大幅に削減する。売上収益に応じた人員圧縮や帰休を実施し、20年3月末予定で早期退職者も募る。全体の設備投資も期初予想の620億円から500億円まで削減。これらにより、18年度に比べて19年度は185億円、21年度は390億円の効果を創出して収益性を高める考えだ。