対向式ダイレスト成形の試験機
鏡面化ダイヤモンドコーティングを施した工具

日産自動車は10月2日、クラシックカーやカスタムカー、レース仕様車など、少量モデルのボディパネルを低コストで生産できる「対向式ダイレス成形」を実用化したと発表した。11月末までに旧型車などの補修部品として事業化する。開発した技術は金型が不要となる。このため、将来的には量産ラインでの活用も想定しており、実現すれば型の償却費を削減し、量産コストを大幅削減できる可能性がある。

生産が終了して補修備品の在庫がないクラシックカーや、軽量化するための新しい素材に置き換えるレース仕様車、カスタムカーなどは、少量なため、ボディパネルなどの補修部品を入手するのは困難だ。今回開発した対向式ダイレス成形は、ロボットに取り付けた棒状の工具を板材に押し当てて、徐々に成形する「インクリメンタル成形技術」を活用、ロボットを板材の両側に配置して、対向する2つの工具を制御することで成形する。複雑な形状でも自由に成形可能。型が不要なため、月産100枚未満の少量生産でもコストを大幅に抑制できる。

対向式ダイレス成形は、対向する2つの工具の位置を最適に制御するプログラミングによって複雑な形状でも高精度に加工できる。工具の表面に鏡面化ダイヤモンドコーティングを施しており、加工時の摩擦低減と無潤滑化によって自動車用ボディの品質を確保できる。鏡面化ダイヤモンドコーティング工具の開発と、ロボットの最適軌道生成ロジック、日産がこれまで培ってきたプレス成形予測技術によって高品質の加工を実現した。

ボンネットなどの大型部品から小物部品まで加工できるほか、アルミやボディパネルで採用されている高張力鋼板(ハイテン材)などでも対応できる。

対向式ダイレス成形は現状、ロボットのデータ処理に時間を要するため、加工に長時間かかっている。今後、加工時間の短縮に取り組む方針で、実現すれば量産部品のプレス加工に活用することも想定している。従来のプレス成形で必要だった型を設計・製作するための投資の抑制や開発時間を短縮できる可能性がある。