パナソニックホールディングスは5月9日、グループ経営改革として推進している収益改善目標を達成するため、2025年度中に連携対象会社で1万人規模の人員削減を実施すると発表した。家電などの「くらし事業」部門や「インダストリー」部門などを対象に、国内と海外でそれぞれ5000人規模を想定している。車載用電池を手掛ける「エナジー」部門は今回の人員削減の対象外とした。
同社は米国のトランプ関税の影響を織り込まずに、26年度に営業利益6000億円以上を目指している。目標の達成に向けて人員の適正化や赤字事業の撤退・終息、拠点の統廃合など、構造改革を断行してスリム化し、収益力を強化する。人員削減などの構造改革で合計1220億円の収益改善を見込む。先行投資してきた車載用電池などの収益改善や、ソリューション領域などの注力事業を伸ばし、営業利益6000億円超を実現する考えだ。
同社の楠見雄規グループCEO(最高経営責任者)は「(24年度業績が)同業他社と比べて低収益で成長できていない。雇用に手を付けることは忸怩たる思いだが(今の経営基盤では)10年後、20年後に持続できない」と述べ、リストラを断行する方針を示した。
同日発表した26年3月期の業績見通しには、市場環境が不透明なため、トランプ関税の影響を織り込まなかったが、調整後営業利益への影響額は「780億円を下回る程度」と見ている。同社の25年3月期の米国の売り上げは約1兆5700億円で、車載用電池のエナジーが主力事業だが、主に米国で生産しているため、輸入している電池材料を除いて追加関税による直接の影響は限定的となる見込み。
一方、同社の車載用電池の主要納入先であるテスラの電気自動車(EV)の販売が低迷しているが、エナジーの26年3月期の業績見通しは増収増益を見込む。このうち、車載用電池は前期と比べて1177億円の増収、調整後営業利益も米国IRA(インフレ抑制法)による補助金を除いて160億円の増益を見込む。
テスラの販売が低迷した25年1~3月期も、エナジーの車載用電池の需要は順調に推移しており、ネバダ工場はフル生産に近いという。米中が互いに関税を大幅に引き上げた影響で、テスラが中国で生産していた電池パックの調達を米国にシフトしていることもあり、需要を押し上げていると見られる。
楠見グループCEOは「この1年は(車載用電池の)需要が落ちることはないと想定している」と述べた。