日本福祉車輌協会(上田満樹理事長)の車椅子簡易固定標準化コンソーシアムは報告書「車いす移動車利用時の車椅子簡易固定システムの社会実装に向けた研究」をまとめ発表した。これによると、調査対象の8割超が簡易固定装置に直接のメリットがあると評価すると共に、固定やり直しの解消や、介助者が立ち姿勢のまま車いすを固定できるといったメリットが確認できたとする。
調査は、日本在宅介護協会(森山典明会長)から紹介を受けた通所介護事業所3施設に簡易固定対応の車いす12台、車いす移動車(車いすに座ったまま乗車できる福祉車両)5台を貸与し、3カ月間使用してもらった後に実施したアンケート結果とインタビューをまとめたもの。〝直接メリット〟の一つに上げられた「車いす固定に掛かる時間短縮」については「非常にそう思う」が42%、「ややそう思う」が50%という回答結果となり、利便性を感じる人が9割を超えた。
車いすの「固定解除時間短縮」についても「非常にそう思う」が48%、「ややそう思う」が32%で合計80%となり、装置の効果が確認できた。
車いす移動車のメーカーでは、車いすの前後4点をフックで固定する装置の設定が標準的だ。ただ、固定作業の負担が大きく、作業不良による事故の懸念があるとの指摘がある。
一方、同コンソーシアムでは車いすに装着したアンカーバーと車載装置によってワンタッチで固定できる機構の普及に取り組む。これにより作業負荷・時間を効率化し、車いす乗員の確実な安全確保につながるとみている。
今回の調査では、「車いすの乗降に余裕を持てる」「雨の日の乗降が楽になる」「送迎時間が短くなる」といった間接的なメリットについても4~5割の評価を得た。
従来の固定方法と簡易固定の比較では、簡易固定の方が「良い」とする概ね前向きな評価は全体の約5割だった。施設への導入意向を前向きに考えるとの評価も約5割となった。
同コンソーシアムは「行政と連携して推進しているが、普及には運用者に実際の使用でメリットを実感してもらうことと、メリットの幅広い訴求が不可欠」と述べ、継続して普及に取り組む意欲を示した。