日産自動車向けを主力とする部品メーカーが、日産以外の自動車メーカーへの販路拡大を急いでいる。日産の世界販売台数はこの10年で3割以上減少。11月には生産能力をさらに2割削減する方針を示すなど生産規模の縮小を進めており、部品メーカーの経営もこのあおりを受ける。電動化や次世代技術への投資原資を稼ぐためにも、各社は取引先の拡大を迫られている。
日産はカルロス・ゴーン元会長の下、規模を追う拡大路線を展開してきた。その影響で利益率が悪化し、19年に就任した内田誠社長は工場閉鎖などの構造改革に踏み切った。日産の拡大路線と協調する形で投資を行ってきた系列部品メーカーも、過剰設備を抱えたことで業績不振に陥り、22年にはマレリ(旧カルソニックカンセイ)が経営破綻し、経営再建中の河西工業は拠点閉鎖を進めている。
足元では、新興電気自動車(EV)メーカーの台頭で日産の中国事業が急速に悪化、6月には常州工場を閉鎖した。24年度の日産の世界販売見通しは340万台と、過去最高だった17年度(577万台)から4割以上減少する見通しだ。
これを受け、系列部品メーカーは日産への依存度を下げる取り組みを急いでいる。
ヨロズの平中勉社長は、来年以降に本格稼働する岐阜県輪之内町の新工場を「トヨタから認められる工場にする」と宣言する。大型部品の成型に対応するプレス機を新たに導入するほか、車両開発の初期段階から携わる「ゲストエンジニア」をトヨタに送り込める体制も整える。売上高におけるトヨタ向け比率を、現状の1割未満から26年度には15%以上に引き上げる計画で、日産向けの割合は5%ほど下がるとみる。
パイオラックスは、現在15~20%程度の中国系メーカーの売り上げシェアを、30年に3割まで引き上げ、日産向け(23年度約36%)と同水準まで高める。中国での生産体制の見直しを進めており、ファスナーなどの既存製品は集約し、バスバー(導体棒)などの電動車部品の生産を拡大していく。一般的に、新興EVメーカー向けのビジネスでは、利益率の確保が課題だが、同社の山田聡社長は、日系メーカーとの利益率の差は「現状は数%程度」であるとし、開発体制や供給網(サプライチェーン)の現地化を進めることで、埋めていく考えだ。
アルファは、フォルクスワーゲンなどの欧州メーカー開拓を進めており、15年に7割近くあった日産向けの売り上げシェア(自動車部品事業のみ)が、現状で45%近くにまで減少している。塚野哲幸社長が「グループの成長市場」と位置付ける欧州では、新たにルノー向けでドアハンドルの新規受注を獲得し、スロバキア工場への拡張投資を決めた。
長年の課題であった〝脱日産〟を本格化し、供給先の多角化をどこまで進められるかが部品各社の今後を左右する。