上昇傾向にあった事故頻度は下がる見込み

 損害保険大手4社が、現在、赤字に陥っている自動車保険引受利益を、2027年3月期(26年度)までに順次、黒字化する計画を進めていることが分かった。25年1月の保険料の値上げと、濃厚とみられている26年1月の追加値上げが大きい。同時に、各社はコストダウンも実施し、順次、収支改善を進める方針。コロナ禍が過ぎて上昇傾向にあった事故頻度が、足元で下がる傾向にあることも追い風になるとみられる。

 24年4~9月期は、自動車保険引受利益が4社とも赤字だった。車の高機能化、高額化、物価上昇で保険金の支払額が増えているためだ。

 25年3月期は、東京海上日動火災保険のみが黒字となる見込み。物価上昇で保険金単価(車両、対物)は前年度比で約4%上がるが、事故頻度は4%ほど下がる見込みであることが大きい。

 25年1月には4社とも保険料を3.5~5%値上げする。その恩恵をフルに受ける26年3月期は、あいおいニッセイ同和損害保険が黒字化する計画。同社と三井住友海上火災保険の2社を傘下に持つMS&ADインシュアランスグループホールディングスは今後、事故頻度が下がる傾向とみている。データや人工知能(AI)を活用した事故削減策を進めるとともに、不正請求を排除するなどして収支を改善していく。

 損害保険ジャパンは値上げで26年3月期に150億円、27年3月期は250億円程度の利益改善効果を見込んでいる。

 さらに、4社は26年1月にも値上げする公算が大きくなっている。実施されれば3年連続(損保ジャパンは2年連続)となる。その根拠は、保険料コストを計算する損害保険料率算出機構(早川眞一郎理事長、東京都新宿区)が算出した「参考純率」が24年6月に金融庁に認められたことだ。

 損保ジャパンは「参考純率の改定も踏まえ、可能な限り早期に追加の改定を実施する方針」としている。同社はさらに、年齢や等級ごとに補償条件の見直しや引き受け制限の実施、事故が多い法人契約の条件を見直すなどして収益の改善を図る。そして27年3月期の黒字転換を目指す。同社にとって、現在の中期経営計画の終了時に当たる。

 このタイミングで、三井住友海上火災も黒字化を見込んでおり、これで4社が黒字となる見通しだ。

 一方、ここ最近、被害が目立っている降雹(ひょう)についても、各社は収益を左右しかねない要因として対策に力を入れている。24年4月に起きた兵庫県の降雹被害では、大手4社だけで1300億円超(火災保険なども含む)の発生保険金となった。専門会社と連携し、降雹の可能性が高まった場合は、保険契約者やディーラーの従業員の携帯電話に通知するシステムを開発するなどしている。少しでも早めに対策するだけで、損害を減らせるとみており、支払い保険金の抑制にもつなげる考えだ。