旧ビッグモーターの不正請求などの補償や訴訟対応を引き継いだバーム(和泉伸二社長、東京都多摩市)は2日、東京地裁に民事再生法適用の手続き開始の申し立てを行った。同日付で受理され、監督委員に瀬戸英雄弁護士(LM虎ノ門南法律事務所)が選任された。資本金は1億円で負債総額は約830億円。同社は「債務は全額支払う方針は変わらない」とした上で、「裁判所という第三者の管轄下で、債務額と返済スケジュールを確定することが目的」と強調している。

 関係者の話を総合すると、債務の内訳は金融機関からの金融債務が420億円。損害保険会社関係が約50億円、下請法違反の関係で約10億円、個人の保険で数億円。

 また、特に大きいのは、土地に絡み債務が確定しないものが数百億円あるという。違約金がらみで最大300億円のようだ。不祥事や再編の過程で土地を借りる予定にしていたが借りなかったり、新店の契約をしたが作ることができなかったり、店があったが、閉店してそのまま残ったものなどがあるという。これ以外にも確定できない債務が多くなりそうだったため、法的整理を選んだもよう。

 バームは現預金が300~330億円あり、旧ビッグモーターから中古車事業を引き継いだウィーカーズ(田中慎二郎社長、東京都千代田区)に貸している不動産の収入が年間12億円ある。これで債務を返済できると説明している。ただ、当初より、返済期間は長くなりそうで、20年かかるという話もある。

 2025年8月ごろに再建計画を提出する予定で、和泉社長はそのまま続投する。和泉社長は、土地関係でもめている案件などについて、地権者へのあいさつ回りなどをしているとみられる。

 バームの民事再生法手続き申請については2日朝に決めたという。ただ一人の取締役の和泉社長や弁護士などの専門家が集まって決めたようだ。

 同社は、今後の選択肢としては法的整理もありえることは債権者には伝えていたというが、大手損保は寝耳に水だったようで、終日情報収集に追われた。

 バームは11月下旬、顧客への対応方針を公表した。18年1月から23年8月末までに、事故で修理をした約20万人に順次「お詫び」の手紙を送付し、資料の保管がなく十分な対応ができない可能性のある一部期間の顧客約12万人に対しては、「クオカード」(500円分)を同封する。補償の対象は最大で8万人まで膨らむ可能性があるとしていた。