車検場での前照灯検査

 自動車検査(車検)における前照灯審査について、国土交通省は、8月から予定していた「全車すれ違い用前照灯(ロービーム)計測」の運用を関東など一部地域で2年ほど延期する。周知期間の短さに対する不満や「年式・車種によっては対応が難しい」などの意見が整備事業者から寄せられたため。今後、実態を調査して対応策を検討するが、延期された地域でも準備や調整が整いしだい、本格運用に入る可能性もある。

 国交省は、1998年9月1日以降に生産された自動車を対象に、2015年9月から前照灯の審査をロービーム計測へと段階的に移行してきた。ただ当時は、ロービーム用前照灯試験機が普及していなかったことなどから、経過措置を18年6月から適用していた。

 具体的には、ロービーム計測が難しい一部の車両に対し、ロービームの照射光線を確認した上で走行用前照灯(ハイビーム)に切り替えて計測し、基準適合性審査を行うことを認めていた。この経過措置は7月末に廃止する予定だった。

 全車ロービーム計測を遅くとも2026年8月までとするのは、関東、近畿、四国、九州・沖縄(6月中旬時点)。地域によっては準備が整いしだい本格運用を開始する可能性もある。北海道、東北、北陸信越、中部、中国では、すでに実施している地域もあり、予定どおり今年8月から全車ロービーム計測に完全移行する。 

 延期地域にある自動車検査場でも、8月から「原則として初回入場時はロービーム計測のみ」で基準適合性を審査する。ただし、基準に満たなかった場合、当日の再入場(2回まで)において従来の経過措置を適用する。初回を含め3回の審査に合格しなかった場合、再申請が必要になる。

 今回、国交省が一部地域で全車ロービーム計測の本格運用を延期したのは「どれだけ調整してもカットオフライン(明瞭境界線)が出てこない」「レンズなどの交換部品がない」「(本格運用までの)周知期間が短い」といった意見が整備事業者などから寄せられたためだ。

 このため国交省は、実態調査を実施し、地域の事情なども踏まえながら今後の対応を検討することにした。

 国交省によると、ロービーム計測で基準不適合となる自動車は①レンズ面のくもり②内部リフレクターの劣化③前照灯ユニットと相性の悪いバルブに交換した―ことなどにより、光度が不足した状態や、配光が崩れた状態のまま受検しているものが大半を占めるという。

(2024/6/18  修正)