ベアリングボール(写真)やパワー半導体関連で商機を探る

 日本特殊陶業は、パワー半導体に用いるセラミックス基板の事業化調査(FS)に着手した。窒化ケイ素をはじめとしたセラミックス製品のノウハウを生かし、IGBT(絶縁ゲート型バイポーラトランジスタ)などのパワー半導体の基板生産を検討する。中期経営計画で掲げる2025年3月期の売上高目標6千億円は1年前倒しで達成する見込み。次期中計に向け、既存事業の収益力を高めるとともに、セラミックス技術を応用し、新たな柱となる事業の育成を急ぐ。

 窒化ケイ素はセラミックスの一種で、高い強度や粘り強さを持ち、軽量で絶縁性や熱伝導性にも優れる。電気自動車(EV)や高効率な電気製品に欠かせないパワー半導体の基板にも用いられる。富士経済(菊地弘幸代表取締役、東京都中央区)によると、次世代パワー半導体市場は2035年に22年比31・1倍の5兆4485億円になる見通し。

 同社としては、長年培ったセラミックス技術を基板の性能向上や量産に生かせるとみている。川合尊社長は「熱伝導性に優れる窒化ケイ素や窒化アルミニウムは以前から研究しており、(基板にも)技術を生かせる。IGBTをひとつの事例とし、次の中計に向けて新規事業の確実性を高めたい」と語った。

 同社は窒化ケイ素製のベアリング用ボールも手がけており、工作機械などに用いる高負荷・高回転のモーターに採用されている。鋼球製に比べて軽いため、電費向上に貢献するとして、EV用eアクスル向けなどでも需要が伸びているという。課題はコストだが、川合社長は「材料と加工法を工夫し、特性を維持しながら値段を下げられれば、さらに伸びる」と見込む。セラミックスを用いた内燃機関以外の事業として、パワー半導体関連などの新規事業のほか、ベアリングボールの受注増も目指す。

 主力の自動車用点火プラグ事業は今後の数量減に備え、デンソーからの事業譲受に向けた検討も始めた。事業規模を維持しつつ合理化を進め、供給責任と収益確保を両立させた上で新規事業を積み上げ、中長期的な成長を目指す。