2024年1月に新設する「イノベーション・ハブ」

 スバルが電気自動車(EV)シフトを急ぐ。10月に組織改正を済ませ、2024年1月には新たな開発拠点を設ける。2日に発表した23年4~9月期連結業績の連結営業利益率は8・4%と、EV販売で収益力の高いテスラや中国の比亜迪(BYD)並みの「稼ぐ力」を取り戻した。ただ、好業績をけん引しているのはガソリン車だ。「これまでの開発体制では戦えなくなる」(大崎篤社長CEO)との危機感からEVシフトを加速させていく。

 スバルの23年4~9月期業績は営業利益が前年同期比で7割近く(68・3%)増え、1858億円と過去最高益となった。円安が進み、為替差益の625億円を計上したこともあるが、北米での新車販売が好調で、連結販売台数が前年同期比17・8%増の46万9千台と大幅に増えたことが大きい。

 ただ、スバルの主力市場である米国でもEV販売が増えつつある。スバルが米国で扱うEVはトヨタ自動車と共同開発した「ソルテラ」のみで、しかも販売は苦戦している。競争力が高く、スバルらしいEVの開発が急務だ。

 エンジンや変速機がないEVは製造工程も大きく変わるため、10月1日付で製造部門の組織改正を実施した。製造本部の名称を「モノづくり本部」に変え、技術本部の開発試作部にある試作部門を、一部を除いてモノづくり本部に移管した。技術部門と製造部門が一体となって試作した方が開発リードタイムを短縮できるからだ。

 商品企画から始まり「設計」「試作・評価」「開発」「製造」とリレー方式で開発する従来の手法では新車開発のリードタイムが長くなる。異業種や新興EVメーカーは開発リードタイムが極端に短く、短期間に新型EVを相次いで投入している。これらに対抗していくためには「新車開発のリレー方式を止めて、企画から製造までの時間を圧縮する」(大崎社長)やり方でなければ勝てないと見ている。

 開発体制も強化する。今年3月に東京都三鷹市にある開発拠点を刷新したのに続き、群馬県太田市に新たな開発拠点「イノベーション・ハブ」を24年1月に設ける。開発や製造部門、取引先サプライヤーのエンジニアが一体となって電動化時代に対応する技術開発に取り組むとともに、次代を担う人材を育成する狙いもある。

 スバルは、25年から矢島工場(群馬県太田市)でEVとガソリン車を混流生産するほか、27年以降には大泉工場内でEV専用ラインを稼働させる予定だ。米国でもEVを現地生産する予定で、大崎社長が10月に訪米するなど、工場の立地選定を進めている。バッテリーの調達先を確定してから正式に立地を決める予定だが、最終決定まで「そんなに時間をかけない」(大崎社長)としている。

 今期の研究開発費は「電動化をガンガン進めるため」(大崎社長)、当初計画より150億円多い1350億円を投じる。ガソリン車で稼いだ利益をEV関連事業に集中投資している。狙いどおり、新興や異業種のEVメーカーに対抗できる競争力の高いEVを開発できるかが、スバルの将来を左右しそうだ。

(2023/11/14 修正)