デンソーが提供する胸ポケットサイズの検査用スキャンツール

 特定整備制度の経過措置が終了する2024年3月末が迫る中、電子制御装置整備の認証件数が伸びていない。23年7月末の認証件数は4万7225件(うち自動運行装置は216件)と、認証工場全体(9万1946カ所=22年度)の半数をやや超えた程度。期限まで1年を切った23年度以降も毎月1千件以下と、総じて低調に推移している。国土交通省などは混乱を避けるため、早期取得を再三呼び掛けてきた。しかし、このままのペースで進めば、経過措置が終了する直前で申請が殺到する可能性が高い。

 同様のケースは、過去にもある。例えば、21年10月からの認証未取得などの指定整備工場で、電子制御装置整備の対象車両に保安基準適合証を交付できなくなった。この直前のタイミングで、認証件数が著しく増加。同年8、9月は単月の認証件数が3千を超えた。一部車両に保適証が交付できなくなった10、11月も、2千~3千を上回る水準だったことから、申請が集中し、審査に影響が出たことがうかがえる。今回の経過措置の終了以降は、どれだけエーミング(機能調整)作業などの実績があっても、未取得の場合は未認証行為に当たる。こうした事態を避けるには、やはり早期に準備する必要がある。

 また、車検で電子制御装置まで踏み込んだ機能の確認も始まる。23年10月には1年後に本運用を控える継続検査でのOBD(車載式故障診断装置)検査のプレ運用が始まる。検査に使用可能な法定スキャンツール(外部故障診断機)は8月15日までで、バンザイ(柳田昌宏社長、東京都港区)とインターサポート(高松晃貴代表、大阪市中央区)、デンソーの3社・4機種が型式試験に適合した。プレ運用は認証工場の習熟を高めるのが狙いで、検査オペレーションなどの見直しにも生かせそうだ。

 現状、検査用スキャンツールまたは対応予定の機種の多くが整備・検査用となっており、事業場によっては工具待ちが発生する可能性がある。人手が限られている中で、従来通りの業務をこなしていくためにも、対応機器の確認や工程の見直しを進めるのは必須になるとみられる。

 6月開催の「オートサービスショー」では、検査に特化した機種も複数点出品された。役割が限定的なことから、整備用に比べて価格が抑えられているのが特徴。車検台数の多い事業場や、検査対応予定はないものの必要十分な整備用スキャンツールを既に所有している事業場などの選択肢になる。

 一方、OBD検査で電子制御装置整備に関する特定DTC(故障コード)が検出された場合、電子制御装置整備の認証未取得の事業場では手も足も出せなくなる。ディーラーなどへの外注がスムーズにいかなければ、最終的にはユーザーが不利益を被ることとなる。ビッグモーター(和泉伸二社長、東京都港区)による自動車保険金の不正請求で、ユーザーから整備業に対する見方も厳しくなっている。各整備事業者と顧客が改めて信頼関係を深めていくためにも、新たなルールにのっとった体制をいち早く構築していくことが責務となりそうだ。

(村上 貴規)