FCスタック
水素タンク

 トヨタ自動車は、新型「MIRAI(ミライ)」に搭載した燃料電池(FC)システムで、初代に比べ約7割のコスト削減に成功したことを明らかにした。設計や工程を全面刷新して実現にこぎ着けた。今後は量産効果がコスト削減のカギを握る。トヨタの狙いどおり、商用車や定置用などの需要をどれだけ掘り起こせるかが焦点になる。

 中核部品であるFCスタックに積層するセル(単電池)1枚当たりのコストは先代モデル比で10分の1にした。セル内部のセパレーターは流路形状などを見直し、3層構造から2層構造へと簡素化。特に最も複雑なメッシュ形状だった1層を廃止したことで、セルのコストを大幅に低減するとともに、生産時間も従来の数十分から数秒まで縮めた。さらに、多孔質カーボン担体を採用することで高価な白金(Pt)の使用量を6割削減し、電極単位面積当たりの出力を高めることにも成功した。この結果、新型のFCスタックは初代に比べてセルを370枚から330枚に減らしつつ、最高出力を1割以上、高めた。

 高圧水素タンクも、カーボンの巻き付け工程において設備動作の高速化や品質測定の自動化などで生産性を3倍に高めた。また、生産を担うトヨタの下山工場(愛知県みよし市)と豊田合成のいなべ工場(三重県いなべ市)は、ともに高圧ガス保安法に基づく「登録容器製造事業者」の認可を初めて取得。立会検査を自主検査に代替できるため「大幅にコストが下がった」(豊田合成)。この結果、水素タンクやFCスタックなどFCシステム全体のコストは初代に比べ約7割減らすことに成功した。具体的なコストは非公表だが、国が掲げた「2025年に0・5万円/㌔㍗」の目標に対して「ほぼオンラインで来ている」(トヨタ技術者)という。

 ただ、ミライの車両価格は710万~805万円(消費税込み)と初代からほぼ変わらない。車格を上げたこともあるが、車両価格は既存部品を含めた生産台数に左右されるからだ。このためトヨタは、第2世代の開発に当たり、当初から転用を視野に入れて設計。商用車にも耐えられるよう出力密度(5・4㌔㍗/㍑)を高め、システム重量も24㌔㌘と初代の6割程度に抑えた。制御も可能な限り標準化した。

 トヨタの前田昌彦執行役員CTOは「初代はそもそも供給能力が十分でなかった」と述べ、新型では量産技術の確立によってFCスタックの生産能力は「初代の10倍に拡大した」と明かす。年間3万基程度とみられる。ミライの販売目標は非公表だが、FCシステムの外販でコストを下げ、新型で量産効果を享受する好循環が築けるか注目される。