鈴木社長
新開発のNAエンジン

スズキは12月24日、軽ワゴンとSUVを融合したクロスオーバー軽「ハスラー」をフルモデルチェンジして2020年1月20日に発売すると発表した。2014年1月に発売した初代ハスラーは、年間販売目標6万台に対して6年間で約48万台、年平均8万台を販売するなど、想定以上にヒットした。このため、2代目は外観をキープコンセプトにしながら、新しいプラットフォームや新開発エンジンを搭載、先進運転支援システムを採用するなど、中身を一新した。消費増税などで低迷している国内新車市場をけん引することを目指す。

新型車のコンセプトは「もっと遊べる!もっとワクワク!!もっとアクティブな軽クロスオーバー」。スズキの鈴木俊宏社長は「キラリと光るモノづくり企業としてたくさんのワクワクを提供できるスズキであり続けたい」と述べた。

新型ハスラーは、丸型ヘッドランプやスクエア基調のフロントグリルなど、一目でハスラーと分かる初代モデルの特徴的な外観デザインを踏襲しながら、中身は大きくチェンジした。

ハイテン材(高張力鋼板)を活用して軽量化と高剛性の両立を図ったプラットフォーム「ハーテクト」を採用してホイールベースを35mm延長して後席乗員の足元スペースを広くした。前席の左右乗員間の距離も30mm拡大し、広い室内空間を実現した。

インテリアはメーター、オーディオ、アッパーボックスを3連インパネカラーガーニッシュでガードするイメージを表現するなど、大幅に変更した。スズキの軽自動車で初となるカラー液晶メーターを採用、車両に関する情報がグラフィックなどを使って表示される。

新型車には、日立オートモティブシズテムズ製のステレオカメラを搭載し、スズキの軽自動車として初となるアダプティブクルーズコントロール(ACC)を設定する。渋滞走行時にも対応する全車速追従機能付で、運転操作の負担を軽減する。ステレオカメラが左右の区画線を検知して、車線を逸脱しないようにシステムが支援する「車線逸脱抑制機能」をターボ車に装備する。

NA(自然吸気)エンジンは新開発で、スズキの軽として初めてデュアルインジェクションシステムとクールドEGR(排出ガス再循環装置)を採用した。デュアルインジェクションシステムは1気筒当たり2つのインジェクターで燃料を微粒子化することで燃料と空気の混合気を均質化、燃料効率向上を図った。クールドEGRは排出ガスを冷却して再循環させることで、燃焼温度を抑制する。

スズキ初となる新開発CVT(無段変速機)も搭載する。吐出口を2つ設けることで油圧を最適管理し、オイルポンプの仕事量を低減できる。アイシン・エィ・ダブリュ製で、燃費性能の向上する。

最高出力をNA車で1.9kW、ターボ車で2.3kWに高出力化し、トルクもアップ(ターボ車)したマイルドハイブリッドシステムを全モデルに標準装備し、モーターアシストによって力強い加速を実現するパワーモードを設定する。

基本性能を向上するため、スズキとして初となる構造用接着剤を採用した。部品間のすき間を埋めることで接合やボディー全体の剛性を高め、連続性を確保した。ボディー全体の一体感が向上して高い操縦安定性、乗り心地の向上を図った。また、ルーフパネルには、共振周波数をコントロールして、こもり音や雨音を低減する「高減衰マスチックシーラー」を軽自動車に初めて量産技術として採用した。防音材や遮音材を配置して車室内の静粛性を高めた。

4WD車には、雪道やアイスバーンでのタイヤの空転を抑える「スノーモード」を設定した。滑りやすい路面では過大なエンジントルクを抑え、発進・加速時にはタイヤの空転を抑えてスムーズに走行するのを支援する。

安全装備を充実、走行性能を向上しながら価格アップを抑えた。グレード「G」の2WDは136万5100円で、初代と比べて1万7000円アップに抑えた。

販売目標は月販6000台と、保守的に設定した。国内新車市場が低迷しており「景気的に難しいためで、必達目標にしたい」(鈴木社長)としている。