自動運転の開発では車両の統合制御と開発の効率化が課題となっている

 【ミュンヘン=浅井大樹】制御開発ツール大手の独dSPACEは、従来の制御開発関連機器の販売を主体としたビジネスモデルを、制御開発全般を支援するサービス提供ビジネスへ転換する。自動運転技術の開発では車両全体での統合制御が不可欠となっており、同社は実機を用いずに複数の電子制御ユニット(ECU)をまとめて検証できる技術を強みとしている。自動運転技術に関する効率的な開発ニーズが高まる中、人工知能(AI)を活用したシミュレーション技術など制御開発全般にわたるサービスを提供することで、次世代技術の早期実用化につなげていく。

 19日からミュンヘンで開催しているユーザー向けイベント「dSPACEワールドカンファレンス」で、マーティン・ゲッツェラーCEOが事業戦略の転換を明らかにした。ゲッツェラーCEOは「自動運転の開発により、端から端までカバーできるソリューションが求められている」と事業環境の変化を説明した上で、「これまで製品販売中心のビジネスを展開してきたが、今後はソリューションベースに移行する」と方針を述べた。

 現在、同社の自動車関連事業では、パワートレーンなど部品群ごとの制御開発に使用する製品の販売が主体となっている。一方で、近年は自動運転技術の開発をきっかけに、車両全体の統合制御に対する開発ニーズが高まっている。その中で同社の製品は、異なる部品群を組み合わせた統合制御が可能なことを強みとしているため、各国の自動車メーカーや部品メーカーから自動運転技術に関する開発支援の要請が急増している。

 このため2019年7月、AI技術開発のスタートアップ企業である独understand.ai(アンダースタンド・エーアイ)社を買収。AI技術を同社のシミュレーションソフトと組み合わせることで、さまざまな走行環境を再現できる体制を整備した。これを活用して自動運転技術の課題である開発時間の短縮につなげるなど、従来の製品販売から制御開発の支援サービスの提供へビジネスモデルを転換していく。

 dSPACEは、制御プログラムのシミュレーション開発に関する機器を手がけている。欧州や日本、米国、中国など各国の自動車メーカーや部品メーカーが導入しており、制御開発関連ツールでは世界トップシェアを誇っている。