「2020年に高速道路でレベル3(システムの要請に応じて手動運転)を実現し、2025年を目処に、パーソナルユースでの自動運転技術を確立する」―ホンダの八郷隆弘社長は6月19日、東京都港区台場のホテルで開いたの第95回定時株主総会で、先進的な安全技術開発に力を入れる方針を示した。ライバルを技術でリードしてきたホンダだが、ここ数年は技術力が低下していると指摘される。株主からはホンダの経営陣に創業者・本田宗一郎氏のチャレンジスピリットが受け継がれているのかと問う声もあがった。

高齢者の運転操作ミスが原因の悲惨な交通事故が大きな社会問題となっている中、株主総会ではホンダの安全技術に関する質問が相次いだ。

ホンダは、新型車に衝突被害軽減ブレーキなどの先進運転支援システム(ADAS)「ホンダ・センシング」の標準装備を進めており、現在、国内の新車販売の8割にホンダ・センシングが採用されている。株主からホンダ・センシングのフル装備したモデルが少ないと指摘された八郷社長は、ホンダ・センシングのグローバル展開と、機能を進化させる方針を改めて示した。四輪事業本部長の関口孝常務執行役員も「国内では全てのモデルに標準化し、海外市場でも進めており、積極的に取り組む」と説明した。

また、ペダル踏み間違い防止装置が装着されていない既販車の事故が相次いでいることに関して八郷社長は「後付け対応できるように販売していきたい」と述べ、対応を検討する方針も示した。同日で専務取締役を退任した松本宜之氏は「(交通事故ゼロは)究極的には自動運転と思っているが(実現には)時間がかかる」と述べ、当面はADASの機能を拡充して「危険を未然に防ぐことに注力する」方針だ。

ホンダはエアバッグの標準装備や、世界で初めて米国マスキー法をクリアしたCVCCエンジンなど、技術力が強みの自動車メーカーだったが、最近は技術開発の競争の軸が電動化や、自動運転など、電子的な技術に移ってきたこともあって、他社に技術で先行しているイメージはない。