ホンダは、同社初となる軽乗用電気自動車(EV)「N―ONE e:(エヌワンイー」を12日に発売した。軽EV市場では日産自動車「サクラ」が先行するが、ホンダはサクラより航続距離を延ばし、新たな充電網も展開するなど実用性の高さで対抗する。

 ホンダは2030年までに国内販売のすべてを電動車とする計画だが、軽に関してはハイブリッド車(HV)の投入計画がなく、すべてEVとなる見通し。エヌワンイーは軽全車種EV化を目指す上での試金石となる。

 エヌワンイーは、商用バン「N―VAN e:(エヌバンイー)」に続く軽EV第2弾で、初の軽乗用EVとなる。ガソリン車「N―ONE(エヌワン)」をベースとし、充電口を組み込んだフロントグリルをはじめ、フェンダーやリア周りのデザインを変更した。11日に都内で開いた発表会で、日本統括部の川坂英生統括部長は「軽自動車の最量販価格帯での提供を実現することで、多くのお客さまに確実にEVを普及していく」と語った。

 軽乗用EVでは、22年6月に発売された日産のサクラが先行する。エヌワンイーはサクラをベンチマークとし、航続距離(WLTCモード)はサクラより115㌔㍍長い295㌔㍍とした。一方で、車両価格(消費税込み)は269万9400円からと約10万円高に抑えた。充電時の認証操作などの手間を省いた「プラグ&チャージ」を全国展開するなど、使い勝手も高めた。

 40年に世界販売のすべてをEVなどのゼロエミッション車(ZEV)にするホンダにとって、エヌワンイーは国内の電動車戦略を進める上での試金石となる。世界的にEV需要が減速する中でもホンダは40年目標を据え置くが、5月にはHVにも力を入れるなど軌道修正を図った。国内目標については30年の新車販売のすべてを電動車とする目標も据え置いているが、軽向けのHV技術は開発しておらず、30年にすべてEVとする必要がある。

 川坂統括部長は「これまでの目標を変えず、日本市場に合わせた電動車戦略を確実に進めていく」と話す一方で、「お客さまが(EVを)要望しているかが一番大事なこと。30年断面(のパワートレイン構成)をどうしていくかはちょうど議論しているところだ」とも語る。ホンダはエヌワンイーで国内のEV需要を見極め、電動車戦略を練り直す考えだ。