ドライバーモニタリングシステムや車載ソフト事業などは強化する

 三菱電機は28日、2025年度中に今後の成長が見込めない事業について撤退を検討すると発表した。事業規模はあわせて8千億円。内燃機関車関連部品や電気自動車(EV)向け部品などの自動車機器事業も抜本的に見直す方針で、同社の「事業ポートフォリオ上の自動車機器事業の位置付けを見極めていく」方針だ。不採算事業から撤退して経営効率を向上し、稼ぐ力の最大化を図る考えだ。

 同日にオンラインで開いた「IRデー2025」で明らかにした。

 同社はすでに、自動車機器事業のカーマルチメディアなど、24年度末までに5千億円規模の不採算事業について撤退を決定している。今回、25年度中に新たに8千億円規模の低収益事業について撤退を検討する。

 漆間啓社長CEO(最高経営責任者)は「今後の(三菱電機の)発展に必要な事業か、世の中の趨勢からみて価値を創造できるのか、パートナーに移した方が最適かなどの観点から判断する」とし、低収益事業の撤退や売却、継続を決定する。自動車機器事業の24年度の利益率は3・9%と低いことから、領域ごとに撤退を検討していく。

 自動車機器事業では、リーンな経営体質に転換するため、間接業務の削減と人員の最適な配置を進める。事業所や営業所も統廃合する。米国工場の一部を空調機器用圧縮機工場に転用を決めているが、他の地域の生産拠点も集約を検討して経営効率化を図る。

 パワートレイン領域に関しては、将来の市場動向を予測して事業ポートフォリオを判断する。同社は内燃機関車向け部品とEVなどの電動車向け部品の両方を手がけている。内燃機関車向けは「(ライバルの撤退による)残存者利益の最大化」を狙いつつ、EVの成長率が鈍化していることから、電動車関連への投資についても慎重に判断する。

 同社が重点を置くデジタル基盤事業とのシナジー(相乗効果)が見込まれるSDV(ソフトウエア・デファインド・ビークル)分野は、ドライバーモニタリングシステム事業や車載ソフトウエア事業などを強化し、事業の柱に成長させることを目指す。

 同社はカーマルチメディアから撤退を決めているほか、ボッシュとのインジェクター合弁工場を今年末に操業停止する。車載用ランプシステムについては合弁事業化したスタンレー電気に経営をシフトしていく方針で、自動車機器事業を縮小している。