トヨタ自動車は、元町工場(愛知県豊田市)にあるスポーツカー専用工場「GRファクトリー」を刷新し、生産効率を大幅に高めた。これまで同じ建屋内にあったボディー溶接と組立・検査工程のうち、組立・検査工程を別の建屋に移した。これにより、L字形だった組立・検査のライン配置を直線に変え、生産工程を整流化した。移設に伴って部品の受け入れ余力も拡張し、構内物流体制を強化した。GRファクトリーの生産車種は販売が好調なため、将来的には生産能力増強の可能性も探っていく。
GRファクトリーは2020年に稼働したトヨタ初のスポーツカー専用工場だ。現在は「GRヤリス」「GRカローラ」「LBX MORIZO(モリゾウ) RR」を日当たり約100台、生産している。
工程レイアウトの変更は20年の稼働後、初めてだ。溶接などを行うボディー工程に隣接していた組立・検査工程を、元町工場で最も北に位置する物流エリアの建屋に移設した。これに伴い、従来はターンテーブルを介してL字型につながっていた組み立てと検査の工程を一直線上に配置。「ターンテーブルで時間をかなり取っていた」(担当者)というタイムロスがなくなり、組み立てた車両をスムーズに検査ラインへ移動できるようにした。
部品の受け入れ体制も改善した。以前の建屋では1カ所で部品を受け入れていたが、移設後の組立・検査工程では2カ所から受け入れる体制とした。元町工場全体の構内物流の整流化にもつながっているという。
GRファクトリーの特徴は、変種(モデル)・変量(数量)・変技術(新技術)に柔軟に対応できる点にある。スポーツカーの宿命とも言える少量生産に対応するため、GRファクトリーでは量産車の生産ラインで用いるベルトコンベアや大型搬送機(吊り下げ)ではなく、AGV(自動搬送機)を導入。アンダーボディーやメインボディーの増し打ち溶接、カーボンルーフや足回り部品の取り付けなどの各工程(セル)をAGVがつなぐ形でラインを構成している。各工程間を車両を載せたAGVが移動し、工程ごとに技能工が部品を組み付ける仕組みだ。
AGVとセルを組み合わせた生産方式は量産車と比べて時間と手間がかかり、コストが割高になるものの、高い精度で加工や部品の組み付けができたり、需要変動にも追随しやすい利点もある。
現在、GR車の受注は好調で、納車までの期間が長期化している車種もある。今回のレイアウト変更については「純粋に移設なので能力増強ではない。ただ、可能性は探っていきたい」(同)としており、供給能力の改善も視野に入れていく方針だ。